コラム

自分らしさとセルフトーク

蓮彩聖基

私たちは朝起きた時から、頭の中では思考が始まっています。私たちは膨大な言葉を頭の中で呟いているのです。今日は寒いとか、昨日のあの言葉は少し気にかかるとか、あの人は今頃どうしているかな。など。声に出していないだけで、心の内側ではずっと喋っているのです。

これをコーチングではセルフトークと言います。自分自身への語りかけ全般のことです。心の中の独り言だけではなく、外の世界に対して「世の中はこうだ」「社会はこうだ」と頭の中で認識している、その判断や論評もすべてセルフトークに含まれるわけです。一説には、私たちは一日に数万回ほどこの内的な発話を繰り返していると言われています。数の正確さはひとまず置いておくとして、それだけ大量の言葉が、自分でも気づかないうちに自分自身の内側を流れている、ということなのです。

世間ではよく、ポジティブなことを口に出しましょう、前向きな言葉を使いましょう、と言われています。もちろん、それ自体は悪いことではありません。しかし、口に出している言葉というのは、私たちのセルフトークのほんの一部分にしかすぎないのです。実際には、私たちは口を閉じている時間のほうが圧倒的に長く、その沈黙の中で、私たちのマインドの中ではすでに膨大な言葉を語ってるのです。表面の言葉だけを丁寧に選んでも、セルフトークが辛辣なままだったら、結局はそちらのほうが力を持ってしまうのです。

セルフトークはセルフイメージを形成します。自分とはこういう人間なのだ、という無意識の自己イメージのことですね。いわゆる「自分らしさ」と呼ばれているものの正体は、このセルフイメージです。そしてこのセルフイメージは、過去のセルフトークの累積からできあがっています。子どもの頃から、親や学校の先生や周囲の大人たちから繰り返し言われてきた言葉を、私たちは反論する術もなく受け入れてきました。あなたは勉強はできないけれど運動はできるね、あなたは内気だね、あなたは飽きっぽいね。そのような言葉が何度も降ってきて、いつのまにか自分でも自分に対して同じことを呟くようになる。セルフイメージというのは、そうやって時間をかけて固められてきたものなのです。

ただ、固まったものは、ほぐすこともできるわけです。ここが大事なところだと私は思っています。セルフトークはほとんどが無意識的ですが、ふと意識に上げられれば、そこで初めてコントロールできるようになります。今この瞬間、椅子に座っているお尻の感覚も、意識を向けるまでは存在していなかったかのようでしたね。ですが、感覚としてはずっとそこにあった。セルフトークも同じで、無意識に流れている語りを、いったん意識の側に引き上げる。気づくだけでいいのです。気づけば、書き換える余地が生まれるのです。

ではどのように書き換えれば良いのでしょうか。ここでゴールの話が出てきます。今の自分のセルフトークは、過去に作られたセルフイメージに沿って自動的に再生と強化がされています。それを変えるには、現状の延長線上ではなく、ゴール側の自分、なりたい自分、好きな自分のセルフトークを参照することなのです。その自分だったら、今この場面で何と言うかな。そう自分自身に問いかけて、新しいセルフトークを取り入れ古いセルフトークは書き換えていくのです。最初は意識的にやる必要があります。ですが、意識的に繰り返したものは、いずれ無意識的にできるようになっていくのです。

もちろん、絶対的に正しいセルフトークというものはありません。一人ひとりゴールが違えばブリーフシステムが違い、見ている世界が違うので、私が良いと思う言葉が、あなたにとって良いとは限らないのです。だからこそ、参照すべきは外にある正解ではなく、あなた自身が描くゴール側によって決まってくるのです。

ネガティブなセルフトークが出てきても、自分を責める必要はありません。それはこれまでのセルフイメージから素直に湧いてきただけのことであって、湧いてくること自体は仕方がないことなのです。気づいて、書き換える。その繰り返しのなかで、確実に別人に成長していけます。

記事URLをコピーしました