コラム

エフィカシーは過去の延長ではない

蓮彩聖基

自分にはできる。心の奥でそう思える時と、そう思えない時はありませんか?同じ仕事を任されても、ある日はすんなり受け入れられても、ある日は妙に重く感じる。そんな心理的な揺らぎを誰しも経験しているはずです。

苫米地式コーチングでは、この感覚をエフィカシーという概念で説明をします。エフィカシーとは、自分のゴールを達成する自己能力の自己評価のことです。難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「自分にはできる」という自分自身への評価のことですね。

ここでひとつ、大切な視点があります。エフィカシーは過去の実績とは関係がないのです。資格があるとか、経験があるとか、誰かに褒められたとか、そのような外側の根拠とは切り離されたところで成り立つものなのです。もちろん、過去の成功体験が自信につながることもあるでしょう。ただし、過去だけを根拠にしていると、過去の延長線上にしか自分の未来を描けなくなってしまうのです。

私たちの多くは、自分の能力を見積もるとき、つい過去を振り返ってしまいます。あの時できなかったから、今回もきっと無理だろう。そんな、過去のデータを未来に貼り付けてしまうのです。ですが、本来の私たちはそんなに小さな存在ではありません。今この瞬間に、自分のゴールに対する自己評価を、過去から独立に持ち直すこと。それがエフィカシーを高く保つということなのです。

ここで、ひとつ補足しておきたいことがあります。未来そのものは、まだ変えられないものです。けれど、今の自分が「自分らしい」と感じる範囲、つまりコンフォートゾーンは、今この瞬間から書き換えていけるものなのです。エフィカシーは、そのコンフォートゾーンを未来側のゴールに合わせて並び替えていく、その内側の働きを支える評価そのものですね。

エフィカシーが高く保たれていると、不思議なことが起こり始めます。今いる環境や状況に対して、なんだかしっくりこないという違和感が湧いてくるのです。本当の自分はもっと違う場所にいるはずだ。そんな感覚が、無意識のうちに行動や選択を変えていきます。逆にエフィカシーが下がっている時、私たちはどれだけ能力を持っていても、それを使う場面そのものを避けてしまうのです。

周りと自分を比べてしまいやすい時期もありますね。同期の昇進、SNSで見える誰かの活躍、転職市場での自分の値段。そのような外側の物差しで、自分の価値を測ろうとしてしまう人もいるでしょう。けれど、それらはすべて過去の積み重ねを評価する物差しに過ぎません。エフィカシーは、そこにはないのです。

もちろん、口先だけの自信を持てばよいという話ではありません。空元気では意味がないのです。エフィカシーは、心から実現したいゴール、しかも今の自分の延長にはないゴールに対して保ち続けていくものなのです。望んでもいないことに対して自己評価だけ高めようとしても、無意識はそれを本気にしません。だからこそ、まずは自分が本当に望む未来を選ぶことから始まるのです。

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