モチベーションが続かない本当の理由
モチベーションが続かないのは、あなたの意志が弱いからではありません。
何かを新しく始めようと決めた最初の数日は、たいてい、うまく走り出せます。早起きも、勉強も、運動も、気合いがあるうちは、体は動いてくれます。しかし一週間も経つころには、その熱はゆっくりと冷めていきます。そして手元に残るのは、「またできなかった」という後悔と罪悪感のことが多いでしょう。
これを、自分の根性のなさのせいにする必要はありません。気合いというものは、そもそも続かないようにできているからです。
「〜しなければ」という恐怖から動く力は、強制的動機付け(have to)と呼ばれます。締め切り、罰、周りの目などは、たしかに人を一時的には動かしますが、恐怖を燃料にしている以上、燃え尽きれば止まります。気合いとは、この have to を、自分の内側で焚き続けようとする状態に近いのです。
つまり、問題はやる気の量ではありません。
私たちは、足りないのはモチベーションだと思い込んでいます。もっと意識が高ければ、もっと強い気持ちがあれば、と。しかし本当に足りていないのは、気持ちの強さではなく、認知の方向なのです。
どこへ向かっているのかが定まらないまま、アクセルだけを踏もうとする。だから、すぐ息切れする。モチベーションが続かないのは、燃料の問題ではなく、行き先が定まっていないからなのです。
たとえば、車のエンジンをどれだけ吹かしても、目的地が決まっていなければ、ただ空ぶかしで疲れるだけです。逆に、本当に行きたい場所が決まっていれば、私たちは誰に言われなくても、自然とハンドルを握ります。
では、その行き先は、どこで決まるのでしょうか。ここで、脳の性質が関わってきます。私たちの脳には、いつもの自分に戻ろうとする力——ホメオスタシスが働いています。今の自分にとって自然な状態を、保とうとする仕組みです。
ですから、ゴールが今の自分の延長線上にあるかぎり、脳はそれを「今のままで届く」と見なし、本気では動きません。頑張って少し背伸びする程度の目標は、脳にとっては現状維持の範囲なのです。気合いで無理に押しても、すぐ元の場所へ引き戻されます。
だからこそ、苫米地式コーチングは、ゴールを現状の外側に置くことを何より重んじます。それも、「今の自分では、どうやって届くのか見当もつかない」と感じるくらい、遠い場所にです。
ただし、外側に置きさえすれば動く、という単純な話ではありません。決め手になるのは、臨場感——どちらの世界を、よりリアルに感じているか、です。
ホメオスタシスは、いま自分がもっとも強くリアルさを感じている世界に向かって働きます。ですから、現状のほうがまだ生々しいうちは、外側にゴールを置いても、脳は私たちを元の場所へ引き戻します。
しかし、ゴールの世界の臨場感が現状を上回ったとき、流れは逆転します。脳はそちらを自分にとって自然な居場所として選び直し、同じホメオスタシスが、今度はその未来へ向かう力に変わるのです。現状を守っていた力が、未来を実現する側へ、向きを変えるのです。
では、その臨場感は、どこから生まれるのでしょうか。心からそうしたい、と思える未来からです。
「〜しなければ」という義務に、私たちはリアルさを感じられません。本当に望む世界だからこそ、ありありと思い描け、そこに臨場感が宿ります。現状を上回る臨場感を持てるのは、心から望むゴールだけなのです。これが、望みから動く力——建設的動機付け(want to)です。
ですから、やる気を絞り出す前に、行き先を変えていくのです。もっと頑張ろうとするのではなく、「本当はどこへ行きたいのか」を、現状の外側に置き直してみる。方向さえ定まれば、モチベーションは、振り絞るものではなくなります。
続ける力は、気合いの強さではありません。
どこへ向かっているか——その一点が定まったとき、私たちははじめて、力まずに進みはじめるのです。