「自分を許す」とは何か——Selfによる地形の彫り直し
ミスをしたとき、過度に自分を責めてしまっていませんか?「なんてバカなんだ」と心の中で自分を罵る、その時、私たちは往々にして、それを「反省」だと思い込んでいます。
しかし、それは反省とは言い難いものです。自己批判を繰り返すことは、脳内の「内部表現」を書き換える作業に他なりません。
自分を罵るたびに、あなたは自分自身に関する評価関数 V(x,t)(認知の地形)を書き換え、ミスをした状態こそが「最も自分らしく、安定している(低コストな)」場所であるかのように、地形を彫り直しているのです。
ここに大きなスコトーマ(盲点)があります。私たちのEgo(自我)は、一瞬の感情で動くのではなく、過去から未来へと累積される「不快(内的緊張)」が最小になるように、人生の舵取りをしています。ですから、自分を責めて「ダメな自分」を安定領域(TCZ:トータルコンフォートゾーン)に据えてしまうと、Egoはあなたを何の苦労もなく、次のミスへと連れて行ってしまいます。
これが、反省しているつもりが「失敗への航路」を歩んでしまっているという、認知の皮肉な構造なのです。(そしてそれは無意識に。)
例えば、何度も料理で失敗をしてしまうケースを考えてみましょう。失敗するたびに、「自分には向いてないのかな」などと自分を貶める必要はありません。
「大丈夫。次はできる・うまくいく」そんなプラスな言葉をかけてあげるのです。これは単なる気休めではなく、評価関数 V をゴール側へ引き寄せる、恣意的な地形の再設定そのものなのです。
そもそも、みじめな気分になることを人生のゴールに据えている人はいないはずです。にもかかわらず、私たちは自分を責めることで、まさにその望まぬ場所へとEgoを最適化させていってしまうのです。
この地形そのものを再定義し、選び直す力は、あなたの中のもう一つの働きである「Self(自己)」にあります。Selfは、可能世界の中からどのTCZを望ましいものとして選ぶか、あるいはTCZそのものをどう作り変えるかという、決定権を持っているのです。
ミスをすることは正常なことです。だれもが失敗をします。自分自身を執拗に責めるのをやめたとき、なぜそのミスが起きたのかを冷静に観察できるようになります。
観察できれば、次は上手くいくはずです。
自分にやさしくしましょう。それは弱さではなく、認知の主導権を自分の手に取り戻すための、極めて論理的で実用的な「技術」そのものなのです。