現状の外側にゴールを設定する——見えなかった道は、決めた後に見えてくる
私たちは多くの場合、過去の記憶を素材にして、未来のゴールを組み立てています。
年収を少しだけ上げる。今の仕事で役職に就く。数キロだけ痩せる。どれも、今の自分から地続きの場所にあるゴールです。ですが、こうしたゴールを掲げても、数週間後には熱が冷め、気がつけば元の日常に戻っている——そんなことが、往々にしてあります。
それは、意志が弱いからではないのです。私たちの心身には、いつもの自分へ戻ろうとする力——ホメオスタシスが、強力に備わっています。これは、現状を保つことで生命を守ってきた、大切な防衛本能です。
そしてこの力は、私たちがいちばんリアルに感じている世界——つまり、今の現状を、自分の居場所として守ろうとします。今の自分の延長線上にあるゴールは、どれほど高く見えても、その現状の内側にあります。私たちがリアルさを感じている中心は、現状のまま動かないのです。
だから、最初は熱を持って走り出しても、やがてホメオスタシスが「いつもの自分」へと、私たちを引き戻していきます。
ここには、もう一つの仕組みが関わっています。自分にとって重要でない情報を、はじめから視界の外へ締め出す働き——スコトーマ、つまり心理的な盲点です。
現状の中にとどまる限り、脳が見せてくれるのは「現状を保つための情報」ばかりです。そこから抜け出すための道は、たいてい、この盲点の中に隠れているのです。
だからこそ、苫米地式コーチングでは、ゴールを「現状の外側」に設定します。これは、無謀な高望みをすることではありません。今の自分には見えていない世界の側に、先に立つということなのです。
今の収入の何倍もの場所で、まったく違う環境で、心からやりたいことだけをして生きている——そんな、今の常識からは非現実的に思える場所。そこにこそ、本当のゴールがあります。
現状の外側にゴールを置くと、何が起きるのか。日常で言えば、このような感覚に近いかもしれません。ある時計が欲しいと決めた途端、街を歩く人の手元の時計が、急に目に飛び込んでくる——今までもそこにあったのに、見えていなかっただけなのです。ゴールも同じで、本気で「こうなりたい」と決めた瞬間から、それまで盲点だった方法や出逢いが、向こうから現れ始めます。
ただし、現状の外側にゴールを置きさえすれば、自動的に世界が変わるわけではありません。決め手になるのは、そのゴールの世界を、どれだけリアルに感じられるか——臨場感なのです。
そして、ありありとしたリアルさが宿るのは、心から望む未来だけです。だからこそ、いま抱えている制約は、いったん横に置いてみてください。これまでの経歴も、能力の有無も、未来を思い描くときには必要ありません。
ただ、あなたが心から望むこと(want to)だけを基準に、遠い未来を描いてみるのです。そのリアルさが、今いる場所のリアルさを上回ったとき、同じホメオスタシスが、今度はあなたを未来の側へ引き上げていきます。やり方は分からなくても、大丈夫なのです。
方法は、ゴールを決めてしまった後から、スコトーマが外れることで見えてくるものです。
あなたが本当に歩みたい未来は、今の延長線上には、まだ見えていないのかもしれません。これまでの常識を手放して、想像もつかないほど自由な未来へ、視線を一つ向けてみる——あなたの世界が書き換わり始めるのは、そこからなのです。
