ゲシュタルトとは?「今の自分」から「なりたい自分」へ全体を変える方法
なぜ部分的な変化では変われないのか
「仕事だけ変えても、なぜか満たされない」「環境を変えても、また同じパターンを繰り返してしまう」
人生の一部分だけを変えようとしても、なかなか本当の変化が起こらない。そんな経験はありませんか?
実は、私たちはゲシュタルトという「全体性を持ったまとまり」として存在しているため、部分的な変化だけでは十分ではないのです。
この記事では、認知科学における重要な概念「ゲシュタルト」と、それを理解することでなりたい自分になる方法を解説します。
ゲシュタルトとは何か
ゲシュタルトの定義
ゲシュタルトとは、全体性を持ったまとまりのある構造のことです。
個々の要素の単なる集合ではなく、全体として一貫した形や意味を持つものを指します。
ゲシュタルトの身近な例
例1:音楽のメロディー
音楽は1つ1つの音の集合体でありながら、全体としてメロディーを奏でます。
「ド」「レ」「ミ」という個別の音は、それぞれ独立した音です。しかし、それらが特定の順序とリズムで組み合わさると、「メロディー」という新しい全体性が生まれます。
このメロディーは、個々の音を足し合わせただけでは説明できない、全体としての美しさや意味を持っています。
例2:ファッションのコーディネート
服、靴、アクセサリーなど、個々のアイテムは素晴らしいものでも、全体として見た時のバランスや調和がなければ、素敵なコーディネートにはなりません。
逆に、それぞれは地味なアイテムでも、全体としてまとまっていれば、洗練された印象を与えることができます。
これも、全体が部分の単純な総和ではないことを示すゲシュタルトの例です。
例3:文章の意味
「猫」「好き」「私」という3つの単語を並べただけでは、意味はバラバラです。
しかし、「私は猫が好き」という文章になると、全体として一つの意味を持つゲシュタルトが生まれます。
ゲシュタルトの特徴
部分と全体の相互関係
ゲシュタルトの重要な特徴は、部分情報と全体情報は切り離せず、相互に関係しながら「ひとつの構造」として成り立つということです。
メロディーの例で考える
メロディーという全体があるからこそ、その中の一つ一つの音が意味を持ちます。
逆に、一つ一つの音があるからこそ、メロディーという全体が成立します。
部分と全体は、相互に影響し合い、支え合っているのです。
全体は変えられる
重要なのは、ゲシュタルトは固定されたものではなく、変えることができるということです。
一つの要素が変わると、全体の構造も変わります。そして、全体の構造が変わると、個々の要素の意味も変わるのです。
人格としてのゲシュタルト
私たちもゲシュタルト
私たちの人格もまた、思考・感情・行動・信念・価値観などの部分が組み合わさった1つのゲシュタルトです。
単なる要素の寄せ集めではなく、まとまりある「自己」として存在しています。
全体としての一貫性
あなたという人格には、全体としての一貫性があります。
- あなたの思考パターン
- あなたの感情の傾向
- あなたの行動習慣
- あなたの信念
- あなたの価値観
- あなたのセルフイメージ
これらすべてが、相互に関連し合いながら、「今のあなた」というゲシュタルトを形成しています。
部分だけを変えるのが難しい理由
だからこそ、一部分だけを変えようとしても、なかなか変わらないのです。
たとえば、「行動だけを変えよう」としても、思考や信念が古いままなら、ゲシュタルト全体が元に戻そうとする力が働きます。
全体としての一貫性を保とうとするのが、ゲシュタルトの性質だからです。
コーチングにおけるゲシュタルト
ゴール側と現状側のゲシュタルト
コーチングでは、ゲシュタルトを次のように捉えます。
- ゴールを達成した未来の自分にもゲシュタルトがある
- 現状の自分にもゲシュタルトがある
そして、この2つのゲシュタルトは、本質的に相容れません。
具体例:会社員から起業家へ
現状側のゲシュタルト(会社員としての自分)
- 思考:「安定が大切」「上司の指示に従う」
- 感情:「毎月の給料があって安心」
- 行動:「決められた時間に出社する」
- 信念:「会社に所属することが普通」
- セルフイメージ:「私は会社員だ」
これらすべてが、「会社員としての自分」というゲシュタルトを形成しています。
ゴール側のゲシュタルト(起業家としての自分)
- 思考:「自由に働きたい」「自分で決断する」
- 感情:「自分の力で稼ぐ充実感」
- 行動:「自分の裁量で時間を決める」
- 信念:「自分の人生は自分で創る」
- セルフイメージ:「私は起業家だ」
これらすべてが、「起業家としての自分」というゲシュタルトを形成しています。
なぜ両立できないのか
この2つのゲシュタルトは、同時には存在できません。
「会社員としての安定を求める思考」と「起業家としての自由を求める思考」は、根本的に矛盾しているからです。
どちらか一方の臨場感を強く維持しようとマインドが働きます。
中途半端な状態の苦しさ
「起業したいけれど、会社員でもいたい」という中途半端な状態は、2つのゲシュタルトの間で引き裂かれている状態です。
これが、変わりたいのに変われない苦しさの正体です。
どちらのゲシュタルトも完全には形成されず、どちらにも属せない不安定な状態になってしまうのです。
新しいゲシュタルトを構築する
ゴール側のゲシュタルトを形成する
コーチングでは、現状に縛られたゲシュタルトではなく、未来のゴール側のゲシュタルトを形成していくことが目標です。
そのためには、部分的な変化ではなく、全体としての変化が必要になります。
ゴール側の臨場感を高める
ゴール側の臨場感を高めることで、自然と行動や選択がその未来に沿うようになっていきます。
ゴール側のゲシュタルトが、現状のゲシュタルトよりも強くなれば、マインドは自然とゴール側を維持しようとするからです。
全体を変える技術
新しいゲシュタルトを構築するには、次のような技術を使います。
ビジュアライゼーション
ゴールを達成している自分の全体像を、五感を使ってイメージします。
その時の思考、感情、行動、信念、すべてを体験することで、ゴール側のゲシュタルトが形成されていきます。
アファメーション
ゴールを達成している自分を、現在形で言葉にすることで、ゴール側のゲシュタルトを強化します。
セルフイメージの書き換え
「私はこういう人間だ」という認識そのものを変えることで、全体としてのゲシュタルトが変わります。
まとめ
- ゲシュタルト=全体性を持ったまとまりのある構造
- 音楽や人格のように、部分と全体が結びついてひとつの形をつくる
- 現状の自分とゴール側の自分、それぞれにゲシュタルトがあり、両立はできない
- コーチングでは未来のゴール側のゲシュタルトを強めて構築していくことが重要
人生の一部分だけを変えようとしても、なかなか変わらないのは、あなたが全体としてのゲシュタルトを持っているからです。本当に変わりたいなら、全体を変えることが必要なのです。
ゴールを達成している自分の全体像を、できるだけリアルに感じることで、新しいゲシュタルトが形成されていきます。そして、その新しいゲシュタルトが、あなたを自然と理想の未来へと導いてくれます。