音楽家

失敗が怖い音楽家の方へ|挑戦しない後悔を手放す心の整え方

蓮彩聖基

あなたを止めているのは、本当に「失敗」なのか

新しい曲を世に出すことをためらっている。オーディションに応募する手が止まっている。ライブの出演依頼を断ろうとしている。そんな瞬間、あなたの心の中で何が起きているでしょうか。おそらく「失敗したらどうしよう」という思考が、頭の中をぐるぐると回っているのではないでしょうか。しかし、あなたが本当に恐れているのは「失敗」そのものでしょうか。それとも、失敗したときに「やっぱり私には才能がない」と思い知らされることでしょうか。実は、多くの場合、私たちが恐れているのは失敗という出来事ではなく、失敗によって自分の価値が否定されることなのです。けれど、挑戦しなければ失敗もしない代わりに、何も生まれません。音が生まれる瞬間は、あなたが勇気を出して弦に指を触れたとき、息を吸って声を出したとき、鍵盤を押したときに訪れるのです。

心の中の声が、あなたの可能性を閉じ込めている

私たちは一日に数万回も、自分自身に語りかけています。その言葉の多くは、実は無意識のうちに繰り返されているものです。「私の歌なんて誰も聴きたくないだろう」「あの人に比べて私は全然ダメだ」「また失敗するに決まっている」。こうした言葉が、気づかないうちにあなたの可能性を狭めています。この心の中の声は、過去の体験から生まれています。かつてステージで緊張して声が震えた記憶、誰かに批判された言葉、期待に応えられなかった経験。そうした記憶が「また同じことが起きるかもしれない」という警告として、あなたを守ろうとしているのです。しかし、守ろうとする力が強すぎると、それはいつしか檻になります。大切なのは、その声に気づくことです。「失敗したらどうしよう」という声が聞こえたとき、それを否定するのではなく、まず「ああ、私は今、不安を感じているのだな」と認めてあげてください。そして、その次にこう問いかけてみてください。「挑戦しなかったら、私はどう感じるだろう?」と。

「後悔」という名の沈黙を選ばないで

失敗の痛みは、時間とともに薄れていきます。ステージで転んだ記憶も、音を外した瞬間も、やがては「あのときは大変だったね」と笑って話せる日が来ます。けれど、「あのとき挑戦していたら」という後悔は、時間が経つほど重くなります。なぜなら、挑戦しなかった未来は永遠に「もしかしたら」のままだからです。あなたの中に眠っている音楽を、誰かが待っているかもしれません。あなたが書いた一曲が、どこかで孤独を感じている誰かの心を温めるかもしれません。あなたの声が、誰かの人生を変える一音になるかもしれません。でも、あなたが沈黙を選んでしまったら、その可能性は永遠に閉ざされてしまいます。失敗は、終わりではありません。失敗は、あなたがまだ成長の途中にいるという証なのです。一方で、挑戦しないことには、何も始まりません。音楽家にとって最も恐ろしいのは、間違った音を出すことではなく、心の中で鳴り続けている音楽を、誰にも届けないまま沈黙させてしまうことではないでしょうか。

不安を味方にする、という選択

挑戦しようとするとき、不安や恐れを感じるのは自然なことです。それは、あなたが今まで経験したことのない領域に足を踏み入れようとしている証拠なのです。言い換えれば、不安を感じているということは、あなたが成長しようとしているということ。もし何の不安も感じないのであれば、それは今の自分にとって当たり前のことをしているだけで、新しい自分には出会えません。本番前の静けさの中で感じる緊張、新曲を発表する前夜の胸の高鳴り、大きなステージに立つ前の震え。それらは全て、あなたが新しい世界へ向かおうとしている証なのです。その不安を消そうとするのではなく、「私は今、成長しようとしているのだ」と受け止めてみてください。そして、目を閉じて、挑戦を終えた後の自分を想像してみてください。ステージを終えた後の達成感、新曲を届けた後の充実感、一歩踏み出した後の誇らしさ。その感覚を今、心の中で味わってみてください。その感覚こそが、あなたを前に進ませる力になります。

あなたの音は、あなたにしか奏でられない

失敗を恐れて動けないとき、私たちは往々にして他の誰かと自分を比べています。あの人のように上手く歌えない、あの人のように美しい音が出せない、あの人のように人を惹きつけられない。でも、ここで思い出してほしいのです。音楽は比較の外にあるということを。あなたの声、あなたの指先から生まれる音、あなたの心から湧き上がるメロディは、この世界であなたにしか生み出せないものです。他の誰かになろうとする必要はありません。あなたはあなたの音を奏でればいいのです。完璧でなくていい。まだ発展途上でいい。大切なのは、あなたがその音を世界に届けようとすることです。「私には価値がある」「私の音楽には届けるべき相手がいる」と信じてください。その確信があなたの中で育っていけば、挑戦することは恐怖ではなく、喜びになっていきます。今日、あなたはどんな音を奏でますか?どんな挑戦に一歩踏み出しますか?失敗したらどうしよう、ではなく、挑戦しなかったらどうなるか。その問いを胸に、あなたの音楽を世界に届けてくださいね。

ABOUT ME
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ。苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了。ドクター苫米地ワークス修了。田島大輔グランドマスターコーチに師事。認知科学者 苫米地英人博士より、無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得。
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