自己実現

ある女性が「言葉」と「想像」で人生を変えた物語|アファメーションとビジュアライゼーションの実践

kokihasutami

この記事では、一人の女性の物語を通して、アファメーションとビジュアライゼーションについてお話しします。

この女性を、仮に「ミサキ」と呼びましょう。彼女は25歳、都内の広告代理店で働くごく普通の会社員でした。

そして、彼女の物語は、あなたの物語でもあるかもしれません。

「私なんて」が口癖だった彼女

ミサキは、いつも「私なんて」という言葉を口にしていました。

「私なんて、センスないし」
「私なんて、どうせうまくいかない」
「私なんて、才能ないから」

会議で意見を求められても、「すみません、私には…」と言葉を濁す。新しいプロジェクトの話が出ても、「私には無理です」と最初から諦める。

周りの同期はどんどん成長しているのに、自分だけが取り残されているような気がしていました。

そんなある日、彼女は一冊の本と出会います。

運命を変えた一冊の本

残業帰り、ふらりと立ち寄った本屋で、ミサキは一冊の本を手に取りました。

そこには、こう書いてありました。

「あなたが毎日自分にかけている言葉が、あなたの現実を創っています」

ミサキは、はっとしました。

今日一日で、何回「私なんて」と言っただろう。何回「無理」と言っただろう。

その本には、「アファメーション」と「ビジュアライゼーション」という方法が紹介されていました。

アファメーションとは、肯定的な言葉を使って、理想の自分を「すでに実現している」かのように宣言する方法。

ビジュアライゼーションとは、理想の未来を五感を使ってリアルに想像する技術。

「脳は、現実と想像の区別がつきにくい。だから、繰り返し理想の状態を言葉にし、イメージすることで、無意識がその状態を『当たり前』だと認識し、自然とその方向に行動するようになる」

ミサキは、半信半疑でした。

でも、このまま何もしなければ、何も変わらない。

その夜、彼女は決めました。

試してみよう、と。

アファメーションの始まり:自分への言葉を変える

翌朝、ミサキは小さなノートを用意しました。

そこに、こう書きました。

「私は、価値あるアイデアをたくさん持っている」
「私は、クリエイティブに仕事をしている」
「私は、自信を持って意見を言っている」

書いた瞬間、違和感がありました。

「本当に?私が?」という疑いの声が、心の中に響きます。

でも、本にはこう書いてありました。

「最初は信じられなくても構いません。大切なのは、繰り返すこと。脳は繰り返される言葉を、やがて真実として受け入れるようになります」

ミサキは、毎朝このノートを開き、声に出して読むことにしました。

最初の一週間は、恥ずかしくて小さな声でしか言えませんでした。

「私は、価値あるアイデアをたくさん持っている…」

鏡の中の自分が、どこか頼りなさそうに見えます。

でも、彼女は続けました。

アファメーションの11のルール

ミサキが実践したアファメーションには、いくつかのルールがありました。

  1. 個人的であること:「私は」で始める
  2. 肯定的であること:「〜しない」ではなく「〜している」
  3. 現在形であること:「〜したい」ではなく「〜している」
  4. 達成を示すこと:「できるかも」ではなく「やっている」
  5. 比較をしないこと:他人ではなく、自分に焦点を当てる
  6. 動作を表す言葉:映像が浮かぶような表現を使う
  7. 感情を表す言葉:どう感じるかを含める
  8. 正確であること:具体的で鮮明に
  9. バランス:人生の複数の領域をカバーする
  10. 現実的であること:自分が受け入れられる範囲で
  11. 秘密にすること:他人に話さない

ミサキは、このルールに従って、自分のアファメーションを整えていきました。

「私は、クライアントに喜ばれる提案がをしている人だ」
「私は、チームから信頼されている」
「私は、自分のアイデアに自信を持っている」

毎朝、これらの言葉を繰り返しました。

ビジュアライゼーションの開始:未来を先に体験する

アファメーションを始めて2週間ほど経った頃、ミサキは次のステップに進みました。

ビジュアライゼーション——理想の未来を、まるで今経験・体験しているかのように五感をフル活用して体験すること。

彼女は、寝る前の10分間を、この練習に充てることにしました。

彼女がイメージした場面

ベッドに横になり、深呼吸をして、目を閉じます。

そして、想像し始めました。

1年後の自分。

朝、オフィスに到着します。白いデスクに座り、パソコンを開きます。温かいコーヒーの香りが漂っています。

そこに、上司が近づいてきます。

「ミサキさん、例の新しいプロジェクト、あなたにリーダーをお願いしたいんだけど」

以前なら断っていたであろうこの言葉に、未来の彼女は笑顔でこう答えます。

「はい、やらせてください」

その時の、胸が高鳴る感覚。ワクワクする気持ち。「私ならできる」という確信。

次の場面。

会議室で、クライアントへのプレゼンテーションをしている彼女。

大きなスクリーンに映し出された企画書。会議室のテーブルに置かれた資料の手触り。

「この企画のコンセプトは…」と、自信を持って話し始めます。

クライアントが真剣な表情でうなずいています。

プレゼンが終わった後、「素晴らしい提案ですね」「ぜひお願いしたい」という言葉をもらいます。

その時の達成感。誇らしい気持ち。「やってよかった」という充実感。

ミサキは、この場面を、できるだけリアルに感じようとしました。

五感を使ったビジュアライゼーション

ただ漠然と「成功している自分」をイメージするだけではありません。

視覚:オフィスの景色、スクリーン、クライアントの表情
聴覚:自分の声、拍手、「素晴らしい」という言葉
触覚:資料の感触、手に持つマウス、温かいコーヒーカップ
嗅覚:コーヒーの香り、会議室の空気
味覚:プレゼン前の緊張で感じる口の渇き、終わった後の達成感とともに飲む水の味

そして何より大切なのが、感情です。

その瞬間に感じるであろう喜び、達成感、誇らしさ、充実感を、今、この瞬間に味わうのです。

最初は5分も続きませんでした。

「でも、こんな未来、本当に来るのかな」という疑問が湧いてきて、イメージが途切れてしまいます。

それでも、ミサキは毎晩続けました。

最初の変化:2ヶ月後

アファメーションとビジュアライゼーションを始めて2ヶ月が経った頃、最初の変化が訪れました。

いつもなら断っていた企画会議で、ミサキは思い切って意見を言ったのです。

「私は、こういうアプローチもありかなと思うんですが…」

心臓はドキドキしていました。声も少し震えていました。

でも、不思議なことに、「私には無理」という言葉は浮かんできませんでした。

毎朝繰り返していた言葉が、この瞬間に彼女を支えました。

「私は、価値あるアイデアを持っている」

その意見は、意外にもチームメンバーから好評でした。

「それ、いいね!」「そういう視点、なかったね」

会議が終わった後、先輩が声をかけてきました。

「最近、変わったね。積極的になった気がする」

その言葉を聞いて、ミサキは気づきました。

変わったのは、自分にかける言葉。そして、毎晩イメージしていた未来が、少しずつ現実に近づいているのかもしれない。

脳の仕組み:なぜアファメーションとビジュアライゼーションが効くのか

ここで、なぜこれらの方法が効果的なのかを説明しましょう。

脳は現実と想像を区別しにくい

脳科学の研究により、脳は現実の体験と、臨場感の高いイメージを区別することが苦手だとわかっています。

つまり、リアルに想像された未来は、脳にとって「すでに体験したこと」のように感じられるのです。

ミサキが毎晩プレゼンテーションをイメージしていたように、脳は「プレゼンテーションを成功させた経験」として記憶します。

すると、実際にプレゼンテーションの機会が来た時、脳は「これは初めてではない」と判断し、不安が軽減されるのです。

言葉が無意識の自己イメージを作る

私たちは一日に何万回も、心の中で自分に語りかけています。

「私なんて」を繰り返せば、脳は「私は価値がない」という自己イメージを形成します。

逆に、「私はできる」を繰り返せば、「私は能力がある」という自己イメージが育ちます。

アファメーションは、この無意識の自己イメージを意図的に書き換える技術なのです。

スコトーマ(心理的盲点)が外れる

人間の脳は、膨大な情報の中から「重要」だと判断したものだけを意識に上げます。

「私には関係ない」と思っている情報は、目の前にあっても見えません。これをスコトーマ(心理的盲点)といいます。

しかし、理想の未来を繰り返しイメージすることで、その未来に関連する情報が「重要」と認識されるようになります。

ミサキの場合、「プロジェクトリーダー」をイメージし始めてから、リーダーシップに関する記事や、マネジメントの講座の広告が目に入るようになりました。

情報は元からそこにありました。ただ、彼女の脳が「重要」と認識していなかっただけなのです。

3ヶ月後:最初のチャンス

アファメーションとビジュアライゼーションを始めて3ヶ月が経った頃、ミサキに転機が訪れました。

部署で新しい小規模プロジェクトが立ち上がり、サブリーダーの募集がありました。

以前のミサキなら、確実に手を挙げていませんでした。

「私には無理」「経験もないし」「失敗したら恥ずかしい」

でも、この日は違いました。

毎朝唱えていた言葉が、心の中に響きました。

「私は、チームから信頼されている」
「私は、自信を持って挑戦できている」

そして、毎晩イメージしていた場面。

プロジェクトを成功させた時の達成感。チームメンバーと笑顔で「やりきったね!」と言い合っている場面。

その「未来の記憶」が、彼女に勇気を与えました。

「私、やってみたいです」

震える声でしたが、確かにそう言いました。

上司は少し驚いた表情でしたが、すぐに笑顔になりました。

「よし、任せた。頑張ってくれ」

その場で、ミサキはサブリーダーに決まりました。

プロジェクトの日々:言葉が現実を創る

プロジェクトが始まりました。

正直、最初の2週間は大変でした。わからないことだらけ。予想外のトラブルも起きました。

以前のミサキなら、「やっぱり私には無理だった」と諦めていたかもしれません。

でも、彼女には「習慣」がありました。

困難に直面した時、彼女は自分にこう言いました。

「これは学びの機会だ」
「私は解決策を見つけられる」
「助けを求めることは強さだ」

そして、毎晩のビジュアライゼーション。

プロジェクトが成功した瞬間を、繰り返しイメージしました。

不思議なことに、イメージを続けていると、現実の中でも「次はこうしてみよう」というアイデアが自然と浮かんでくるようになりました。

ホメオスタシス(恒常性維持機能)との戦い

しかし、ここで一つの壁にぶつかりました。

ある日、ミサキは無性に「やっぱりやめたい」という気持ちに襲われたのです。

「私には向いていない」「元の仕事に戻りたい」

これは、脳のホメオスタシスという機能が働いたためです。

ホメオスタシスとは、現状を維持しようとする脳の働き。急激な変化は「危険」と判断され、元の安全な状態に戻そうとする力が働くのです。

ミサキはこの仕組みを知っていたので、自分を責めませんでした。

「これは自然な反応なんだ。脳が、いつもの私に戻そうとしているだけ」

そして、いつもより長くビジュアライゼーションの時間を取りました。

プロジェクト成功後の自分。喜びに満ちた表情。達成感。誇らしさ。

その臨場感を、徹底的に高めました。

すると、不思議なことに、「やめたい」という気持ちが薄れていきました。

ホメオスタシスの基準が、少しずつ「新しい私」の方に移動し始めていたのです。

6ヶ月後:予想以上の結果

プロジェクトは、予想以上の成功を収めました。

成果発表会で、ミサキのチームは高い評価を受けました。

「新しい視点が良かった」「チームワークが素晴らしかった」

上司からは、「次は、正式なプロジェクトリーダーとして挑戦してみないか」という提案をいただきました。

その夜、ミサキは一人で静かに振り返りました。

半年前、「私なんて」が口癖だった自分。

今、プロジェクトリーダーの打診を受けている自分。

何が変わったのか?

特別なスキルを身につけたわけではありません。資格を取ったわけでもありません。

ただ、毎日自分にかける言葉を変え、理想の未来をイメージし続けただけです。

それだけで、無意識の自己イメージが変わり、行動が変わり、周りの反応が変わり、現実が変わっていきました。

1年後:イメージした未来が現実になった日

そして、アファメーションとビジュアライゼーションを始めてちょうど1年が経ったある日。

ミサキは、正式にプロジェクトリーダーとして、大きなクライアントへのプレゼンテーションに臨んでいました。

会議室に入ると、大きなスクリーンが目に入ります。

テーブルに資料を置き、深呼吸をします。

「この企画のコンセプトは…」と話し始めます。

あれ?この光景、どこかで見たことがある。

そうです。1年前から毎晩イメージしていた場面です。

会議室の雰囲気。スクリーン。クライアントの表情。資料の手触り。

すべてが、あの時イメージしていた通りでした。

プレゼンテーションは成功しました。

「素晴らしい提案です」「ぜひお願いしたい」

クライアントからの言葉も、イメージしていた通りでした。

その時、ミサキは深く理解しました。

未来は、イメージした通りになる。

いえ、正確には、イメージすることで、脳がその方向に自然と動き始め、必要な情報に気づき、必要な行動を取るようになる。

結果として、イメージした未来が現実になるのです。

あなたも始められる:アファメーションとビジュアライゼーションの実践方法

ミサキの物語を通して、アファメーションとビジュアライゼーションの力を感じていただけたでしょうか。

これは架空の物語ですが、この方法は実際に多くの人が実践し、効果を実感している科学的な技術です。

アファメーションの始め方

  1. 理想の自分を言葉にする
    「私は〇〇である」という形で、現在形で書き出します。
  2. 11のルールを守る
    個人的、肯定的、現在形、達成を示す、比較しない、動作、感情、正確、バランス、現実的、秘密
  3. 毎日繰り返す
    朝起きた時、夜寝る前など、決まった時間に声に出して読みます。
  4. 感情を込める
    ただ読むのではなく、その状態になったつもりで、感情を込めて唱えます。

ビジュアライゼーションの始め方

  1. リラックスした状態を作る
    ベッドや椅子に座り、深呼吸をします。
  2. 理想の未来を詳細にイメージする
    1年後、3年後、5年後の自分。どこで、誰と、何をしているか。
  3. 五感を総動員する
    視覚だけでなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚を使ってリアルに感じます。
  4. 感情を味わう
    その未来で感じるであろう喜び、達成感、充実感を、今この瞬間に味わいます。
  5. 毎日継続する
    寝る前10分間など、毎日行います。

継続のコツ

  • 最初は短い時間から(5分でもOK)
  • 完璧を求めない
  • イメージが途切れても気にしない
  • 効果を焦らない
  • 楽しむことを忘れない

この物語があなたに伝えたいこと

ミサキの物語は、特別な才能や環境に恵まれた人の話ではありません。

「私なんて」と思っていた、ごく普通の女性の話です。

彼女が特別だったのは、ただ一つ。

毎日、小さな習慣を続けたこと。

自分にかける言葉を選び、理想の未来をイメージし続けたこと。

それだけで、1年後の現実が変わりました。

あなたも、今日から始められます。

「私なんて」を「私なら」に変えること。

理想の未来を、毎晩10分でもイメージすること。

たったそれだけで、あなたの無意識は変わり始め、行動が変わり、現実が変わっていきます。

ミサキがそうだったように。

あなたの1年後は、今日から始まります。

まず、最初の一言。

今日、あなたは自分に、どんな言葉をかけますか?

そして、1年後、どんな自分になっていたいですか?

その未来を、今日から、イメージしてみませんか?

ABOUT ME
蓮彩 聖基 <br>(はすたみ こうき)
蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得
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