「どうせ私なんて」が口癖だった私が変わった理由｜自分を否定する言葉との別れ方

「どうせ私なんて、何をやってもダメだから」

その言葉を口にした瞬間、友人の手が止まりました。

あなたは、「どうせ私なんて」というような言葉を、一日に何回口にしていますか?

その何気ない一言が、実はあなたの可能性を閉ざし、チャンスを遠ざけ、本来の輝きを曇らせているとしたら?

この記事では、「どうせ私なんて」が口癖だった一人の女性が、その言葉から自由になり、新しい自分に出会うまでの物語をお届けします。

「どうせ私なんて」が染み付いていた日々

25歳の奈々は、いつも自分を否定する言葉を使っていました。

会社の同僚が新しいプロジェクトのメンバーを募集しているとき。

「私には無理だと思う。どうせ私なんて、そんな大きな仕事できないから」

友人が習い事に誘ってくれたとき。

「私、センスないから…どうせ私なんて、みんなの足を引っ張るだけだよ」

合コンで気になる男性がいたとき。

「あんな素敵な人、私なんかに興味ないでしょ」

「どうせ私なんて」

「私なんか」

「どうせ無理」

気づけば、奈々の口癖になっていました。

そして、その言葉通り、奈々の人生は停滞していました。

新しいことに挑戦する機会は訪れても、いつも自分から断ってしまう。

恋のチャンスがあっても、自分から距離を置いてしまう。

夢があっても、最初から諦めてしまう。

親友・美月の一言

ある日、大学時代からの親友・美月と久しぶりに会いました。

カフェで近況を話していると、奈々はまた言ってしまいました。

「会社で昇進の話があったんだけど、断ったんだ。どうせ私なんて、リーダーとか向いてないし」

美月は、コーヒーカップを置いてじっと奈々を見つめました。

「ねえ奈々、さっきから何回『どうせ私なんて』って言った?」

「え?」

「今日会ってから、もう5回以上言ってるよ。それ、口癖になってない?」

奈々は言葉に詰まりました。

「そんなに言ってた…?」

美月は優しく、でも真剣な表情で続けました。

「奈々、あのね。あなたが『どうせ私なんて』って言うたびに、私は悲しくなるの」

「え…」

「だって、私の大切な友達が、自分のことをそんなふうに否定してるんだよ? 私には、奈々がそんなに価値のない人間には見えないのに」

美月の目には、涙が浮かんでいました。

「奈々は気づいてないかもしれないけど、その言葉があなた自身を傷つけてるんだよ」

幼い頃の記憶

その夜、奈々は一人でベッドに座り込んでいました。

美月の言葉が、胸に突き刺さったまま抜けません。

「どうして私は、こんなに自分を否定してしまうんだろう」

目を閉じると、幼い頃の記憶が蘇ってきました。

小学生の頃、絵を描くのが好きだった奈々は、母に自分の絵を見せました。

「お母さん、見て! 私、上手に描けたよ!」

母は忙しそうに家事をしながら、チラッと見ただけで言いました。

「そうね。でも、もっと上手な子はたくさんいるわよ。奈々には絵の才能はないと思うから、他のことを頑張りなさい」

中学生の頃、生徒会に立候補したいと父に相談したとき。

「お前には無理だよ。人前で話すの苦手だろ? 恥をかくだけだから、やめておけ」

高校生の頃、友達が「奈々って地味だよね」と何気なく言った一言。

その言葉が、ずっと心に残っていました。

奈々は気づきました。

私の「どうせ私なんて」は、誰かから植え付けられた言葉だったんだ。

カウンセラーとの出会い

美月との会話から一週間後、奈々は思い切ってカウンセリングに行くことにしました。

カウンセラーの先生は、40代の落ち着いた女性でした。

「『どうせ私なんて』という言葉、いつ頃から使うようになりましたか?」

奈々は幼い頃の記憶を話しました。

先生は静かに頷きながら聞いていました。

「奈々さん、あなたは悪くないんですよ」

「え?」

「幼い頃に周りの大人から言われた言葉は、子どもの心に深く刻まれます。それが、あなたのセルフイメージ、つまり『自分とはこういう人間だ』という認識を作ってしまったんです」

先生は続けます。

「でもね、大切なことを伝えたい。それは、過去に植え付けられたセルフイメージは、今からでも書き換えられるということです」

奈々の心に、小さな光が差し込みました。

「本当に…変われるんですか?」

「変われます。ただし、少し時間と努力が必要です。でも、必ず変われます」

3つのステップ

先生は、奈々に3つのステップを教えてくれました。

「まず第一歩は、『気づくこと』です」

「気づく?」

「そう。自分が『どうせ私なんて』と言っている瞬間に、気づくこと。無意識だった言葉を、意識に上げることが最初のステップです」

先生はノートを一冊、奈々に渡しました。

「今日から一週間、否定的な言葉を使った瞬間に、このノートにメモしてください。どんな状況で、どんな言葉を使ったか」

奈々は頷きました。

「第二歩は、『修正すること』です」

「修正?」

「否定的な言葉に気づいたら、すぐに肯定的な言葉に言い換える。『どうせ私なんて』を『私らしくない、大丈夫』に。『無理』を『やってみる』に」

「そして第三歩は、『未来の自分をイメージすること』です」

先生は優しく微笑みました。

「理想の奈々さんは、どんな姿ですか? どんな言葉を使い、どんな表情で、どんな人生を送っていますか? それを、できるだけ鮮明にイメージしてください」

気づきの一週間

その日から、奈々は自分の言葉を観察し始めました。

初日の朝、目覚ましが鳴ったとき。

「あー、また今日も会社か。どうせ私なんて、いてもいなくても変わらないし」

ハッとして、奈々はノートに書きました。

「朝7時。起床時。『どうせ私なんて、いてもいなくても変わらない』」

電車の中で、素敵なバッグを持った女性を見たとき。

「いいなあ。私には似合わないだろうな。どうせ私なんて、オシャレのセンスないし」

またノートに記録しました。

お昼休み、同僚が新しいカフェに誘ってくれたとき。

「私なんか誘ってもつまらないと思うけど…」

またノート。

一日が終わる頃には、ノートに10個以上の否定的な言葉が並んでいました。

奈々は愕然としました。

こんなに、こんなにたくさん、自分を否定していたんだ。

修正の練習

一週間後、カウンセリングに行くと、先生はノートを見て言いました。

「よく気づけましたね。これが第一歩です。では、次は修正の練習をしましょう」

先生は、奈々が書いた否定的な言葉を一つずつ見ていきました。

「『どうせ私なんて、いてもいなくても変わらない』→ これは、どう言い換えられますか?」

奈々は考えました。

「…『私も、会社に貢献している』?」

「いいですね! では、『私には似合わない』は?」

「…『試してみたら、意外と似合うかもしれない』」

「素晴らしい! その調子です」

先生は微笑みました。

「最初は意識的に言い換える必要があります。でも、続けていくうちに、自然と肯定的な言葉が出てくるようになりますよ」

未来の自分をイメージする

「では、最後のステップです。目を閉じて、理想の奈々さんをイメージしてください」

先生の優しい声に導かれて、奈々は目を閉じました。

「理想の奈々さんは、どこにいますか?」

奈々の心の中に、景色が浮かんできました。

明るいオフィス。窓から差し込む光。

デスクには、プロジェクトの資料が広げられている。

「どんな表情をしていますか?」

笑顔。自信に満ちた、柔らかい笑顔。

「どんな言葉を使っていますか?」

「やってみます」

「私ならできる」

「挑戦してみたい」

奈々の胸に、温かいものが広がっていきました。

これが、本当の私なのかもしれない。

小さな変化の始まり

それから、奈々の日々は少しずつ変わり始めました。

朝起きたとき、「どうせ私なんて」という言葉が浮かびかけました。

でも、すぐに言い換えました。

「今日も、できることから頑張ろう」

同僚が新しいプロジェクトのメンバーを募集したとき。

「私には無理」という言葉が喉まで出かかりました。

でも、奈々は深呼吸して言いました。

「興味があります。挑戦してみたいです」

同僚は驚いた顔をしましたが、すぐに笑顔になりました。

「本当? 嬉しい! 奈々ちゃんに手伝ってもらえたら心強いよ」

その瞬間、奈々は気づきました。

私が自分を否定していただけで、周りは私を必要としてくれていたんだ。

美月との再会

一ヶ月後、また美月と会いました。

「奈々、なんか雰囲気変わった?」

美月は、奈々の顔をじっと見つめました。

「そう? 気づいた?」

「うん。なんていうか…明るくなった気がする」

奈々は微笑みました。

「実はね、カウンセリングに通い始めたの」

そして、この一ヶ月の変化を美月に話しました。

美月は嬉しそうに聞いていました。

「すごいね、奈々。あの日、きついこと言ってごめんね」

「ううん、ありがとう。美月が言ってくれなかったら、私、ずっとあのままだったと思う」

二人はカフェで、以前とは違う、明るい未来の話をしました。

チャンスを掴む日

二ヶ月後、奈々が参加した新しいプロジェクトは、予想以上にうまく進んでいました。

そして、部長から呼ばれました。

「奈々さん、次のプロジェクトで、サブリーダーをやってみませんか?」

以前の奈々なら、即座に断っていたでしょう。

「私なんかにリーダーは無理です」と。

でも、今の奈々は違いました。

少し緊張しながらも、奈々は答えました。

「はい。やってみたいです。不安もありますが、挑戦してみます」

部長は嬉しそうに頷きました。

「期待してるよ。君なら大丈夫」

オフィスに戻る途中、奈々は窓の外を見ました。

青い空が広がっています。

「私、変われたんだ」

胸の奥から、じんわりとした誇らしさが湧いてきました。

後輩へのアドバイス

三ヶ月後、新入社員の女性が奈々に相談に来ました。

「先輩、私、自信がなくて…どうせ私なんて、何をやってもダメだと思うんです」

奈々は、その言葉に既視感を覚えました。

かつての自分と、全く同じ言葉。

「ねえ、その『どうせ私なんて』って、誰が言い始めたの?」

「え?」

「あなた自身が、本当にそう思ってる? それとも、誰かに言われた言葉?」

新入社員は、ハッとした表情になりました。

「…言われてみれば、昔から親に『あなたには無理』って言われてきたかもしれません」

奈々は優しく微笑みました。

「じゃあね、それはあなたの真実じゃないかもしれない。誰かに植え付けられた言葉かもしれない」

そして、奈々は自分が学んだ3つのステップを教えました。

気づくこと。

修正すること。

未来の自分をイメージすること。

新入社員は、希望に満ちた表情で「やってみます」と言いました。

半年後の奈々

半年が経った今、奈々の人生は大きく変わっていました。

サブリーダーとしてプロジェクトを成功させ、社内での評価も上がりました。

プライベートでも、友人の誘いに積極的に参加するようになり、新しい出会いもありました。

そして何より、奈々自身の心が軽くなっていました。

「どうせ私なんて」

その言葉は、今ではほとんど使わなくなっていました。

代わりに、こんな言葉が自然と出てくるようになっていました。

「やってみよう」

「私ならできる」

「挑戦してみたい」

ある夜、奈々は半年前に渡されたノートを開きました。

最初のページには、否定的な言葉がびっしりと並んでいます。

でも、ページをめくっていくと、だんだんと肯定的な言葉が増えていく。

そして、最後のページには、こう書かれていました。

「私は、私を大切にしている。私は、私の可能性を信じている。私は、私らしく生きている。」

奈々は、そのページに優しく触れました。

変われた。

本当に、変われた。

あなたへのメッセージ

この物語を読んでいるあなたに、伝えたいことがあります。

もしあなたが「どうせ私なんて」という言葉を使っているなら、それはあなたの真実ではないかもしれません。

幼い頃に誰かから言われた言葉。

周りの環境から植え付けられた信念。

それらが、あなたのセルフイメージを作ってしまっているだけかもしれないのです。

でも、セルフイメージは変えられます。

今、この瞬間から変えられます。

まず、気づいてください。

あなたが自分にどんな言葉をかけているか。

次に、修正してください。

否定的な言葉を、肯定的な言葉に言い換えてください。

そして、イメージしてください。

理想のあなたを、できるだけ鮮明に想像してください。

「どうせ私なんて」→「私らしくない、大丈夫」

「無理」→「やってみる」

「できない」→「できるかもしれない」

最初は意識的にやらなければならないかもしれません。

疲れるかもしれません。

でも、続けていくうちに、それが自然になっていきます。

あなたは、あなたが思っている以上に素晴らしい人です。

あなたには、あなたが思っている以上の可能性があります。

「どうせ私なんて」という言葉を手放してください。

そして、本当のあなたに出会ってください。

あなたの中には、すでに輝く可能性が眠っています。

その扉を、今、そっと開いてみてください。あなたは必ず変われるのですから。

蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)

パーソナルコーチ

Contact

1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得