女性の生き方

視点を上げれば人間関係は変わる|抽象度という考え方

蓮彩聖基

なぜ、あの人との関係はうまくいかないのか

職場の同僚、パートナー、友人、家族。大切にしたいと思っているのに、なぜかうまくいかない関係があります。

相手のちょっとした言動が気になって、モヤモヤが消えない。一度引っかかると、その人の全てが嫌に思えてくる。本当は仲良くしたいのに、距離を感じてしまう。そんな経験はありませんか?

ネガティブにロックオンする脳の仕組み

この状態が続くと、私たちの意識はどんどん「相手の嫌な部分」にロックオンしていきます。すると不思議なことに、相手の良いところや、一緒に過ごした楽しい時間がまるで見えなくなってしまうのです。

これはスコトーマ(心理的盲点)が働いている状態です。ネガティブな感情が強くなると、脳は自動的にそれ以外の情報を遮断してしまいます。

一部が全体に見えてしまう現象

たとえば、相手がたった一度だけ自分にとって不快な言動をしたとします。すると、あたかもその人の全てがダメであるかのように感じてしまうことがあります。

本当は、その言動はその人のほんの一部分に過ぎないはずです。それなのに、その一点に意識がロックオンした途端、これまで見えていた良いところや、一緒に過ごした楽しい記憶がスコトーマに隠れてしまう。

これは恋愛関係だけでなく、あらゆる人間関係で起こりうることです。

抽象度を上げると見えてくる世界

ここで一つ、とても大切な考え方をお伝えします。それが抽象度という概念です。

抽象度とは、物事を見る視点の高さのことです。カメラで言えば、ズームインすると細部が見えて、ズームアウトすると全体像が見える。この「ズームアウト」にあたるのが、抽象度を上げるということです。

悩んでいるとき、視点は下がっている

人間関係で悩んでいるとき、私たちは往々にして抽象度が下がった状態にあります。

「あの人のあの言い方が嫌だ」「この前のあの態度が許せない」というように、具体的な出来事や行動に意識が集中している状態です。

この状態で問題を解決しようとしても、なかなかうまくいきません。なぜなら、細部にフォーカスすればするほど、相手との違いばかりが目につくからです。

視点を上げると共通点が見えてくる

では、抽象度を上げるとはどういうことでしょうか。

たとえば、仕事で意見が合わない同僚がいるとします。「あの人のやり方は間違っている」「なんでわかってくれないんだろう」。そう感じているとき、抽象度は下がっています。

ここで少し視点を上げてみます。

「私たちは何のために一緒に働いているのだろう?」

すると、「お客様に喜んでもらいたい」「良いサービスを届けたい」「チームとして成果を出したい」といった、共通の目的が見えてきます。

やり方や意見は違っても、目指しているゴールは同じかもしれない。そう気づいた瞬間、相手への見方が変わり始めます。

必ず見つかる「共通の想い」

私たちの思考には、必ず共通点を見つけられるポイントがあります。それをLUB(Least Upper Bound:最小上界)と呼びます。

どんなに意見が対立している二人でも、抽象度を一段ずつ上げていけば、必ずどこかで共通の想いや目的を共有できる地点にたどり着きます。

対立から共通点へ導く思考法

たとえばこんな風に考えてみてください。

  • 「仕事のやり方が違う」→一段上げると→「でも、良い仕事をしたいという想いは同じ」
  • 「価値観が合わない」→一段上げると→「でも、お互いに幸せになりたいという願いは同じ」
  • 「考え方が違う」→一段上げると→「でも、より良い人生を送りたいという想いは同じ」

このように、視点を上げていくと、必ずどこかで「私たちは同じ方向を向いている」と感じられるポイントが見つかります。

恋愛関係での活用例

パートナーとの関係で悩んでいるときも同じです。

「彼は家事を手伝ってくれない」「私の話を聞いてくれない」。こうした不満に意識が向いているとき、抽象度は下がっています。

ここで視点を上げてみます。「私たちは何のために一緒にいるのだろう?」

すると、「一緒に笑い合いたい」「支え合って生きていきたい」「安心できる居場所を作りたい」という共通の願いが見えてくるかもしれません。

目の前の不満は消えないかもしれない。でも、その不満を「共通のゴールに向かうための課題」として捉え直すことができます。

臨場感を共有するということ

共通の想いや目的を見つけたら、次はそこに臨場感を持つことが大切です。

臨場感とは、それが自分にとって本当にリアルに感じられる状態のことです。「そうか、私たちは同じゴールを目指しているんだ」と頭で理解するだけでなく、心からそう感じられる状態を作るのです。

自分の中で臨場感を高める

まずは自分自身の中で、共通の想いへの臨場感を高めていきます。

たとえば、パートナーとの関係で悩んでいるとき。目の前の不満や違和感に意識を向けるのではなく、「私たちは一緒に幸せな時間を過ごしたいと思っている」という共通の想いに臨場感を持ってみてください。

二人で笑い合っている場面、支え合っている瞬間、一緒に乗り越えてきた出来事。そうした記憶を思い出しながら、「この人と一緒にいたい」という想いを感じ直してみるのです。

この臨場感が高まると、目の前の問題の見え方が自然と変わっていきます。

相手にも伝えてみる

自分の中で共通の想いに臨場感を持てたら、それを相手にも伝えてみてください。

「私たち、本当は同じことを願っているんだよね」

難しい言葉を使う必要はありません。素直に、自分が感じている共通の想いを言葉にするだけで良いのです。

  • 「私も、あなたも、良い関係でいたいと思ってるんだよね」
  • 「お互い、幸せになりたいって思ってるんだよね」
  • 「一緒に、もっと良いチームを作りたいって思ってるんだよね」

こうした言葉を交わすことで、相手も抽象度の高い視点を共有しやすくなります。そして、二人の間で「共通の臨場感」が生まれます。

この共通の臨場感こそが、関係を修復し、深めていく土台になるのです。

ネガティブに引きずられやすい理由を知る

ここで知っておいていただきたいことがあります。

私たちの脳には、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に注目しやすいという性質があります。これはネガティビティ・バイアスと呼ばれるもので、生存本能に基づいた脳の仕組みです。

脳の防衛本能が働いている

危険を察知して回避するために、脳は「良くないこと」に敏感に反応するよう設計されています。だからこそ、相手の嫌なところ、違和感のある行動、傷ついた出来事が、強く記憶に残りやすいのです。

これは誰にでも起こることであり、あなたが弱いからでも、器が小さいからでもありません。

意識的に視点を上げる必要がある

だからこそ、意識的に視点を上げる練習が必要なのです。

放っておくと、私たちの意識は自然とネガティブな方向に引きずられていきます。相手の嫌なところばかりが目につき、良いところがスコトーマに隠れてしまう。

これを防ぐためには、意識的に抽象度を上げて、共通の想いや目的に臨場感を持つ習慣を身につけることが大切です。

抽象度を上げる具体的な方法

では、実際にどうすれば抽象度を上げることができるのでしょうか。いくつかの方法をお伝えします。

「なぜ?」を問いかける

  • 「なぜ私はこの人との関係を大切にしたいのか?」
  • 「なぜこの仕事を一緒にしているのか?」
  • 「なぜこのチームにいるのか?」

「なぜ?」という問いは、私たちを本質的な目的へと導いてくれます。目の前の出来事から一歩引いて、その奥にある想いや目的を探ることができます。

「もし」と想像してみる

「もし、この問題がなかったとしたら、私たちは何を一緒に実現したいだろう?」

制約を外して考えることで、本当に大切にしたいものが見えてきます。問題に囚われている状態から抜け出し、本質的な願いに気づくことができます。

人間関係は「視点の高さ」で変わる

人間関係の悩みの多くは、視点が下がっている状態で起こります。

相手の欠点、違和感、過去の傷つき。そこにフォーカスし続けると、相手の良い部分や、一緒に目指しているものが見えなくなります。

でも、意識的に視点を上げれば、必ず共通の想いや目的が見つかります。そこに臨場感を持ち、相手と共有することで、関係は変わり始めます。

これは特別な能力ではありません。誰でも、今日から実践できる技術です。

もし今、うまくいかない人間関係があるなら、ほんの少しだけ視点を上げてみてください。「私たちは本当は、何を一緒に実現したいのだろう?」と。

その問いかけが、関係を変える第一歩になるはずです。

ABOUT ME
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ。苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了。ドクター苫米地ワークス修了。田島大輔グランドマスターコーチに師事。認知科学者 苫米地英人博士より、無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得。
記事URLをコピーしました