心と感情

あの時の感情が忘れられないのはなぜ?過去に縛られない心の整え方

蓮彩聖基

「あの時の失敗が、今も忘れられない」「何年も前のことなのに、つらい気持ちが蘇ってくる」

そんな経験はありませんか?

過去の出来事は、時間が経てば自然と薄れていくはずなのに、なぜか感情だけは鮮明に残り続ける。

実は、これには脳の仕組みが深く関係しています。

この記事では、感情を伴う記憶がなぜ消えないのか、そしてその記憶に振り回されずに前を向くための方法をお伝えします。

感情とセットで刻まれる記憶

私たちの記憶には、2つの種類があります。

ひとつは、普通の出来事の記憶。もうひとつは、強い感情とともに刻まれた記憶です。

この「感情とセットの記憶」を情動記憶と言います。

普通の記憶との違い

例えば、昨日の夕食に何を食べたかは、数日経てば忘れてしまいますよね。

でも、大切な人との別れや、人前で恥をかいた出来事は、何年経っても鮮明に思い出せます。

それは、その時に感じた「悲しみ」「恥ずかしさ」「怖さ」といった強い感情が、記憶と一緒に脳に刻み込まれているからです。

脳は感情を優先する

脳には、扁桃体という部分があります。

扁桃体は「感情の司令塔」とも呼ばれ、特に恐怖や不安といったネガティブな感情を処理する役割を持っています。

危険を察知して身を守るために、ネガティブな体験は「二度と同じ目に遭わないように」と強く記憶されるのです。

つまり、つらい記憶が消えないのは、あなたが弱いからでも、忘れる努力が足りないからでもありません。

脳があなたを守ろうとしているからなのです。

過去の感情が今の行動を決めている

情動記憶は、ただ残り続けるだけではありません。

実は、今のあなたの行動や選択に、大きな影響を与えています。

無意識のブレーキ

例えば、過去に恋愛で深く傷ついた経験があると、無意識に「また傷つくかもしれない」と判断し、新しい出会いを避けてしまいます。

仕事でミスをして叱られた記憶があると、「自分には無理だ」と挑戦する前に諦めてしまう。

このように、過去のネガティブな情動記憶は、無意識のうちにあなたの可能性にブレーキをかけているのです。

これをアティテュード(無意識の判断)と言います。

信念として固まる

強い感情を伴う体験は、やがて「私はこういう人間だ」という信念に変わります。

「私は人前で話すのが苦手」「恋愛は長続きしない」といったセルフイメージが形成されると、それに合った行動を無意識に選ぶようになります。

脳は、セルフイメージと現実を一致させようとする性質を持っているからです。

記憶に振り回されないために

では、どうすれば過去の記憶に縛られず、自分らしく前を向けるのでしょうか?

大切なのは、「記憶を消そう」とするのではなく、「新しい記憶で上書きする」ことです。

新しい情動記憶を作る

脳は、現実と想像の区別が苦手です。

つまり、実際には起きていなくても、リアルにイメージした体験は、脳にとって「本当に起きたこと」として処理されるのです。

この仕組みを使って、ポジティブな情動記憶を合成することができます。

理想の未来を感情とともに体験する

ビジュアライゼーションという技術を使います。

理想を叶えた自分の姿を、五感をフルに使ってリアルに脳内で体験してください。

  • どんな場所で、どんな表情をしている?
  • 誰と一緒にいて、どんな会話をしている?
  • その時の喜びや誇らしさを、今深く味わってみる

この練習を毎日繰り返すと、脳は「成功した体験」を記憶として刻み込みます。

すると、過去のネガティブな記憶よりも、未来のポジティブな記憶の方が強くなり、自然と前向きな行動を取れるようになります。

言葉で未来を刻む

言葉も、情動記憶を作る強力な道具です。

アファメーションという方法では、理想を「すでに叶っている」形で言葉にします。

例えば、「私は自信を持って人と接している」「私は愛される価値がある人間です」と毎朝唱える。

その時に、その言葉が本当になった時の嬉しさや安心感を一緒に味わうことが大切です。

言葉と感情がセットになることで、新しい情動記憶が形成され、無意識の判断基準が少しずつ変わっていきます。

自分への語りかけを意識する

毎日、何万回も繰り返される自分への語りかけ。

このセルフトークも、情動記憶に大きな影響を与えています。

ネガティブな言葉に気づく

「私にはできない」「どうせ無理」「また失敗する」

こうした言葉を無意識に繰り返していませんか?

ネガティブなセルフトークは、過去のつらい記憶を何度も思い出させ、ネガティブな情動記憶を強化してしまいます。

優しい言葉に置き換える

まずは、自分がどんな言葉を使っているかに気づくことから始めましょう。

そして、少しずつ優しい言葉に置き換えていきます。

  • 「私にはできない」→「やってみる価値がある」
  • 「どうせ無理」→「もしかしたらできるかもしれない」
  • 「また失敗する」→「前回よりも成長している」

完璧である必要はありません。

少しずつ、自分に優しい言葉をかけてあげる習慣を持つだけで、心が軽くなっていきます。

過去は変えられないけれど、意味は変えられる

過去の出来事そのものは変えられません。

でも、その出来事に対する「意味づけ」は、今からでも変えることができます。

学びの視点を持つ

「あの失敗があったから、今の私がある」「つらい経験が、人の痛みを理解する力をくれた」

このように、過去の体験を「学び」や「成長のきっかけ」として捉え直すことで、同じ記憶でも受け取る感情が変わります。

過去を否定するのではなく、「それもあって今がある」と受け入れることで、心が軽くなっていきます。

未来の自分を今日から作る

あの時の感情が忘れられないのは、あなたが弱いからではありません。

脳があなたを守ろうとしているからです。

でも、過去の記憶に縛られ続ける必要はありません。

理想の未来を感情とともにリアルに体験し、優しい言葉で自分に語りかけ、小さな成功を積み重ねる。

そうすることで、新しいポジティブな情動記憶が育ち、自然と前を向いて歩けるようになります。

過去は変えられないけれど、未来は今日から作ることができます。

あなたの心の中にある「本当はこうなりたい」という想いを、大切にしてください。

そこから、新しい一歩が始まります。

ABOUT ME
蓮彩 聖基 <br>(はすたみ こうき)
蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得
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