何をやっても痩せられなかった私が、脳の仕組みを知って15kg痩せた話

鏡の前で溜息をつく朝

朝7時。ベッドから起き上がった瞳は、洗面所の鏡を見て、また小さく溜息をついた。

27歳の瞳。身長158cm、体重68kg。

「また増えてる」

体重計の数字を見て、瞳は唇を噛んだ。

繰り返される失敗

瞳の部屋には、使われなくなったダイエットグッズが山積みになっていた。

フィットネスバイク。

ヨガマット。

ダンベル。

どれも最初の数日は使ったが、今はただのインテリアになっている。

これまでのダイエット遍歴

瞳は、ありとあらゆるダイエットを試してきた。

糖質制限ダイエット。確かに3kg痩せた。でも1ヶ月後には元に戻っていた。

置き換えダイエット。2kg痩せた。でもすぐにリバウンド。

ジムに入会した。3日通って、それっきり。

オンラインのダイエットプログラム。申し込んだだけで終わった。

自己嫌悪の日々

「私って、本当に意志が弱いんだ」

瞳は毎朝、鏡の前で自分を責めていた。

友達は、次々とダイエットに成功している。

SNSには、ビフォーアフターの写真が溢れている。

「なんで私だけ、できないんだろう」

変われない自分

「もう無理なのかな」

瞳は諦めかけていた。

何をやっても3日坊主。

少し痩せても、すぐに元の体重に戻ってしまう。

「私って、変われない人間なんだ」

そう思い込むようになっていた。

通勤電車での出会い

いつもの通勤電車。

瞳は、吊り革につかまりながらスマホを見ていた。

女性向け雑誌の特集

広告に、女性向け雑誌の見出しが表示された。

「なぜダイエットは続かないのか？脳と心の使い方で人生が変わる」

瞳は思わずタップした。

記事の冒頭には、こう書かれていた。

「ダイエットが続かないのは、あなたの意志が弱いからではありません。脳の仕組み、特にホメオスタシスという機能が働いているからなのです」

ホメオスタシスという言葉

「ホメオスタシス？」

瞳は初めて聞く言葉だった。

記事を読み進めると、詳しい解説があった。

「ホメオスタシスとは、恒常性維持機能のこと。体温を一定に保つように、脳は今の状態を維持しようとする力を持っています」

「ダイエットを始めると、脳は変化を危険だと判断し、元の状態に戻そうとします。これが、リバウンドの正体なのです」

電車を降りて書店へ

その日、瞳は仕事帰りに書店に立ち寄った。

雑誌の記事で紹介されていた本を探すためだった。

「脳と心の使い方〜ホメオスタシスを味方につける」

本を手に取り、ページをめくる。

目次を見ると、興味深い章がたくさんあった。

衝動買い

「買ってみよう」

瞳は迷わずレジに向かった。

普段なら「また無駄遣いしちゃうかも」と躊躇するところだが、今回は違った。

何か、この本が自分を変えてくれる気がした。

本が教えてくれた真実

その夜、瞳は夢中になって本を読み始めた。

ホメオスタシスの仕組み

本の最初の章には、ホメオスタシスについて詳しく書かれていた。

「ホメオスタシスは、あなたを守るために働いています」

「体温が36〜37度に維持されるように、血糖値が一定に保たれるように、私たちの体は常にバランスを取ろうとしています」

「そして、この機能はマインドの世界にも及んでいるのです」

マインドにおけるホメオスタシス

「思考や感情における『いつもの状態』を維持しようとする」

瞳は目を見開いた。

「コンフォートゾーンを保つ働き。これが、変化を妨げる正体です」

「3日坊主になるのは、意志が弱いからではありません。ホメオスタシスが、今の状態に戻そうとしているだけなのです」

リバウンドの真実

次の章を読んで、瞳は衝撃を受けた。

「ダイエットでリバウンドするのは、当然のことなのです」

「脳は、急激な変化を危険だと判断します」

「体重が減ると、生命維持に問題があるかもしれないと脳が判断し、元の体重に戻そうとするのです」

食欲が止まらない理由

「だから、ダイエット中に無性にお腹が空くのです」

「だから、元の食生活に戻りたくなるのです」

「それは、あなたの意志が弱いからではなく、ホメオスタシスが働いているだけなのです」

瞳は涙が出そうになった。

自分を責め続けてきた。

でも、それは間違っていたのだ。

味方にする方法

本の後半には、ホメオスタシスを味方にする方法が書かれていた。

「基準を変えるのです」

「何を現状とするかという基準によって、ホメオスタシスは働きます」

「ゴール側の世界の臨場感が、現状より高くなれば、ホメオスタシスはゴール側を維持しようと働き始めます」

ビジュアライゼーションの重要性

「痩せた自分をリアルに感じること」

「目標体重になった自分の生活を、毎日イメージすること」

「その世界を、脳が現実だと認識するまで、臨場感を高めること」

「そうすれば、ホメオスタシスはあなたの味方になります」

瞳は本を胸に抱きしめた。

「これだ」

セミナーへの参加

本の巻末には、著者が開催するセミナーの情報が載っていた。

「脳と心の使い方セミナー〜ホメオスタシスを味方につける」

瞳は、すぐに申し込んだ。

セミナー当日

週末、瞳はセミナー会場に向かった。

会場には、20代から40代くらいの女性が多く集まっていた。

みんな、同じような悩みを持っているのだろうか。

コーチの登場

「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます」

コーチが登場した。

30代後半くらいの、穏やかな雰囲気の男性だった。

「私も、かつてはダイエットとリバウンドを繰り返していました」

コーチは自己紹介を始めた。

「でも、脳の仕組みを理解してから、人生が変わりました」

「今日は、その秘密をお伝えします」

ホメオスタシスの詳しい解説

セミナーが始まった。

「まず、ホメオスタシスについて理解しましょう」

コーチは、スライドを使って説明を始めた。

「ホメオスタシスは、元々は身体機能を説明する概念でした」

「体温、血糖値、血液のpH。これらを一定に保つ機能です」

マインドへの拡張

「でも、人間の脳は進化しました」

「そして、ホメオスタシスはマインドの世界にも及ぶようになったのです」

「思考、感情、習慣。これらの『いつもの状態』を保とうとします」

「これが、変化を難しくしている正体です」

現状維持の力

「ホメオスタシスは、とても強力です」

コーチは続けた。

「3日坊主、元の習慣に戻る、無意識に避ける。これらはすべて、ホメオスタシスの働きです」

脳は守ろうとしている

「でも、覚えておいてください」

コーチは優しい口調で言った。

「ホメオスタシスは、あなたを守るために働いています」

「急激な変化は、脳にとって危険かもしれないと判断されるのです」

「だから、元の安全な状態に戻そうとするのです」

瞳は深く頷いた。

敵じゃなかった。

ホメオスタシスは、自分を守ろうとしてくれていたのだ。

基準を変えるという発想

セミナーの中盤、コーチは核心的な話を始めた。

「では、どうすればホメオスタシスを味方にできるのでしょうか？」

何を現状とするか

「答えは、基準を変えることです」

コーチは力強く言った。

「ホメオスタシスは、何を現状とするかという基準によって働きます」

「今の体重を現状とすれば、その体重を維持しようとします」

「でも、目標体重を現状とすれば、その体重を維持しようとするのです」

臨場感の重要性

「鍵は、臨場感です」

「ゴール側の世界の臨場感が、現状より高くなること」

「そうすれば、ホメオスタシスはゴール側を維持しようと働き始めます」

瞳は息を呑んだ。

そういうことだったのか。

ビジュアライゼーションの実践

「では、実際にやってみましょう」

コーチは、参加者たちに目を閉じるように促した。

「目標体重になった自分を、イメージしてください」

詳細なイメージング

「鏡を見ている自分。どんな体型ですか？」

瞳は目を閉じて想像した。

引き締まった体。

くびれたウエスト。

スラっとした脚。

「どんな服を着ていますか？」

お気に入りのワンピース。

以前は入らなかったスカート。

自信を持って着られる服。

「友達から何と言われていますか？」

「瞳、すごく綺麗になったね」

「どうやって痩せたの？」

嬉しそうな笑顔の自分。

感情を味わう

「その時の感情を、深く味わってください」

コーチの声が優しく響く。

「嬉しさ、誇らしさ、達成感、充実感」

瞳の胸が温かくなった。

涙が溢れそうになった。

「この感情を、しっかりと体に刻み込んでください」

セミナー後の決意

セミナーが終わった後、瞳はコーチのもとへ行った。

「あの、少しお話しさせていただけますか？」

「もちろんです」

コーチは優しく微笑んだ。

瞳の相談

「私、今まで何度もダイエットに挑戦してきました」

瞳は話し始めた。

「でも、いつも3日坊主で終わってしまって」

「少し痩せても、すぐにリバウンドして」

「自分は意志が弱いんだって、ずっと思い込んでいました」

コーチは静かに頷いて聞いている。

コーチからのアドバイス

「瞳さん」

コーチは穏やかに言った。

「あなたは意志が弱いわけではありません」

「ただ、ホメオスタシスの仕組みを知らなかっただけです」

「これからは、毎日ビジュアライゼーションをしてください」

「目標体重の自分を、リアルに感じ続けてください」

「そうすれば、ホメオスタシスが味方になります」

瞳は深く頷いた。

「はい。やってみます」

3ヶ月後の変化

セミナーから3ヶ月が経った。

瞳の生活は、少しずつ変わり始めていた。

朝のビジュアライゼーション

毎朝、瞳は目を覚ますとまずビジュアライゼーションをするようになった。

目標体重になった自分。

健康的で美しい体。

自信に満ちた笑顔。

自然と変わる選択

不思議なことに、日々の選択が変わってきた。

「今日のランチ、何にしようかな」

以前なら、ラーメンやパスタを選んでいた。

でも今は、サラダとグリルチキンを選んでいる。

「頑張って我慢している」という感覚はない。

ただ、それが自然に感じられた。

4kgの減量

体重計に乗ると、64kgを示していた。

「4kg痩せた」

瞳は信じられない思いだった。

リバウンドの不安

でも、少し不安もあった。

「また戻ってしまうんじゃないか」

これまで何度も経験してきたリバウンド。

コーチへの相談

瞳はコーチにメールを送った。

「4kg痩せたのですが、リバウンドが怖いです」

すぐに返信が来た。

「大丈夫です。毎日ビジュアライゼーションを続けてください。ゴール側の臨場感を高め続けることが大切です」

小さな変化から始まる

「小さな変化から始めることで、ホメオスタシスの抵抗を最小限にできます」

「焦らず、少しずつ基準を移していきましょう」

瞳は安心した。

続けよう。

毎日、未来の自分をイメージし続けよう。

6ヶ月後の転機

セミナーから半年が経った頃、瞳に大きな変化が訪れた。

体重は58kg。10kgの減量に成功していた。

友人たちの驚き

久しぶりに大学時代の友人たちと会った時、みんなが驚いた。

「瞳、すごい痩せたね」

「別人みたい」

「どうやったの？」

秘訣を語る

「実は、脳の仕組みを利用したんだ」

瞳は説明を始めた。

「ホメオスタシスっていう機能があって」

「毎日、痩せた自分をイメージし続けたら、自然と行動が変わっていったの」

友人たちは興味津々で聞いていた。

「それだけで痩せたの？」

「うん。無理な食事制限もしてないし、激しい運動もしてない」

「ただ、毎日未来の自分を感じ続けただけ」

新しい服を買う喜び

週末、瞳はショッピングに出かけた。

以前は、サイズが合わなくて諦めていた服。

今は、自由に選べる。

試着室での感動

「これ、入るかな」

瞳は少し不安だったが、試着室でワンピースを着てみた。

「入った」

鏡に映る自分を見て、瞳は思わず笑顔になった。

綺麗だ。

自分でもそう思えた。

コンフォートゾーンの移動

「あれ、最近お菓子食べてないな」

瞳はふと気づいた。

以前は、ストレスがあるとお菓子を食べていた。

でも今は、そういう習慣がなくなっていた。

自然な変化

「我慢しているわけじゃない」

瞳は不思議な感覚だった。

「ただ、食べたいと思わなくなった」

これが、コンフォートゾーンの移動なのか。

ホメオスタシスが、新しい状態を維持しようとしているのか。

1年後の奇跡

セミナーから1年が経った。

瞳の人生は、完全に変わっていた。

15kgの減量達成

体重は53kg。

15kgの減量に成功していた。

健康的な体

体重が減っただけではなかった。

肌の調子が良くなった。

疲れにくくなった。

朝、すっきりと目が覚める。

階段を上っても息切れしない。

コーチへの報告

瞳はコーチの個別セッションを予約した。

「15kg痩せました」

「素晴らしいですね」

コーチは満面の笑みで言った。

「でも、一番大きな変化は何ですか？」

内面の変化

「自分を信じられるようになったことです」

瞳は答えた。

「以前は、自分は意志が弱いダメな人間だって思っていました」

「でも今は違います」

「自分は変われる人間だって、心から信じられるようになりました」

コーチは深く頷いた。

「それが、最も大切な変化です」

リバウンドの心配

「でも、少し怖いんです」

瞳は正直に言った。

「またリバウンドしてしまうんじゃないかって」

コーチの説明

「大丈夫です」

コーチは優しく言った。

「今のあなたのホメオスタシスは、53kgを維持しようと働いています」

「コンフォートゾーンが完全に移動したのです」

「だから、この体重を保つことの方が自然なのです」

瞳は安心した表情を浮かべた。

「そうなんですね」

新しい挑戦

1年後の瞳は、新しい挑戦を始めていた。

ヨガインストラクターの資格

「ヨガのインストラクターの資格を取ろうと思ってるんです」

瞳はコーチに話した。

「素敵ですね」

「ダイエットで人生が変わった経験を、他の人にも伝えたいんです」

新しいゴール

「特に、私みたいに何度もダイエットに失敗して、自分を責めている人たちに」

瞳の目が輝いていた。

「脳の仕組みを知れば、誰でも変われるって伝えたいんです」

「ホメオスタシスを味方につければ、無理なく変われるって」

コーチは嬉しそうに微笑んだ。

「あなたなら、素晴らしいインストラクターになれます」

エピローグ｜変われない人なんていない

瞳の物語は、特別なものではない。

誰にでも起こりうる変化だ。

ホメオスタシスは敵ではない

「ホメオスタシスは、あなたを守るために働いています」

これが、瞳が学んだ最も大切なことだった。

3日坊主になるのも。

リバウンドしてしまうのも。

すべて、ホメオスタシスが働いているだけ。

味方にする方法

でも、味方にする方法がある。

基準を変えること。

ゴール側の臨場感を高めること。

毎日、理想の自分をイメージし続けること。

そうすれば、ホメオスタシスはゴール側を維持しようと働き始める。

小さな変化から始める

「焦らないことが大切です」

コーチの言葉を、瞳は今でも覚えている。

「小さな変化から始めてください」

「ホメオスタシスの抵抗を最小限にしながら、少しずつ基準を移していくのです」

内面が変われば現実が変わる

内面が変われば、行動が変わる。

行動が変われば、現実が変わる。

瞳は、それを身をもって体験した。

あなたも変われる

「変われない人なんていない」

これが、瞳が今、確信していることだ。

ただ、脳の仕組みを知らなかっただけ。

ホメオスタシスを味方にする方法を知らなかっただけ。

今日から始められる

今日から、あなたも始められる。

毎朝、理想の自分をイメージすることから。

ゴール側の臨場感を高めることから。

そうすれば、1年後のあなたは、今では想像もできないような変化を遂げているはずだ。

瞳がそうであったように。

最後に

瞳は今、幸せだ。

体重が減ったからではない。

自分を信じられるようになったから。

変われる自分を、心から信じられるようになったから。

そして、その経験を他の人にも伝えられるようになったから。

ホメオスタシスは、敵ではない。

味方にすれば、あなたの人生を変える力になる。

瞳の物語は、そのことを教えてくれている。

蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)

パーソナルコーチ

Contact

1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得