自己実現

迷いの中で見つけた答え|本当に望む未来を選ぶ思考法

蓮彩聖基

「このままでいいのかな」

25歳の美咲は、休日の午後、カフェの窓際でぼんやりと外を眺めていました。

就職してから3年。仕事は安定しているけれど、心のどこかで「これが私の本当にやりたいことなのかな」という疑問が消えません。

転職するべきか、今の会社で頑張るべきか。結婚を考えている彼との将来を優先するべきか、自分のキャリアを優先するべきか。

選択肢はたくさんあるのに、どれを選べばいいのかわからない。

そんな時、美咲はあるコーチとの出会いを通じて、人生を変える思考法を知ることになります。

なぜ私たちは選べないのか

「美咲さん、今悩んでいることを教えてくれますか」

コーチの優しい問いかけに、美咲は自分の迷いを話し始めました。

転職、結婚、キャリア、趣味の時間、友人関係。頭の中にはたくさんの選択肢が渦巻いているけれど、どれも大切に思えて、一つに決められない。

「それぞれが大切だからこそ、選べないんですよね」

コーチは静かに頷きました。

「では、一度視点を変えてみましょう。今悩んでいるそれぞれの選択肢は、実は同じ一つの問いに繋がっているんです」

視点を上げると見えてくるもの

コーチは美咲に、こう問いかけました。

「転職したいのも、結婚を考えているのも、友達との時間を大切にしたいのも、根っこにある本当の想いは何でしょうか」

美咲は少し考えて、こう答えました。

「多分、私は…自分らしく生きたいんだと思います。誰かの期待に応えるためじゃなくて、自分が心から幸せだと思える人生を送りたい」

「それです」

コーチは微笑みました。

「今、美咲さんは抽象度を上げたんです。細かい選択肢一つひとつを見るのではなく、その奥にある本質的な想いに目を向けた。これが、迷いを抜け出す第一歩なんですよ」

抽象度とは視点の高さ

抽象度とは、物事を見る時の視点の高さのことです。

目の前の細かい選択肢ばかりを見ていると、どれも同じくらい重要に思えて、選べなくなってしまいます。

でも、視点を一段高くして「私は本当に何を大切にしたいのか」「どんな人生を生きたいのか」と問いかけると、すべての選択肢に共通する本質が見えてきます。

美咲の場合、それは「自分らしく生きる」ということでした。

この本質が見えると、目の前の選択肢が「その本質に近づくためのもの」なのか、それとも「遠ざかるもの」なのかが、自然と判断できるようになるのです。

人生全体を見渡すバランスホイール

「次に、美咲さんの人生全体を見てみましょう」

コーチは紙を取り出し、円を描きました。そして、その円をいくつかの領域に分けていきます。

仕事・キャリア、健康・美容、家族・パートナーシップ、友人・人間関係、趣味・自己表現、学び・成長、経済、社会貢献。

「これをバランスホイールと言います。人生は一つの領域だけで成り立っているわけじゃない。すべての領域がバランスよく満たされることで、本当の豊かさが生まれるんです」

一つだけに偏ると人生は不安定になる

美咲は、自分の人生を振り返りました。

「今まで、仕事のことばかりを考えていた気がします。キャリアを優先するあまり、友人と会う時間も減り、趣味の時間もほとんど取れていませんでした。」

「もしキャリアだけに集中していたら、その領域で何かうまくいかなくなった時、人生全体が崩れたように感じてしまいます。でも、他の領域も大切にしていれば、一つがうまくいかなくても、他の領域から力をもらえるんですよ」

コーチの言葉に、美咲は深く頷きました。

それぞれの領域にゴールを持つ

「では、それぞれの領域で、美咲さんが本当に望む未来を描いてみましょう」

コーチは優しく促しました。

仕事では、どんな自分でありたいか。健康面では、どんな状態でいたいか。パートナーシップでは、どんな関係を築きたいか。

一つひとつの領域に、美咲は自分の想いを書き込んでいきました。

すると、不思議なことが起こりました。

「転職するか悩んでいた」という問題が、実は「仕事だけに人生を捧げたくない」という想いから来ていたことに気づいたのです。

そして、転職することが答えではなく、今の仕事を続けながらも、他の領域を豊かにしていくことが、本当に自分が望んでいることだとわかりました。

自分軸が見えると選択が楽になる

「美咲さん、今どんな気持ちですか」

コーチが尋ねると、美咲は少し驚いた顔で答えました。

「なんだか、すごく軽くなりました。今まで、どっちを選べばいいのかって二択で考えていたけど、実は選択肢はもっとたくさんあったんですね」

「そうなんです。抽象度を上げて本質を見て、バランスホイールで全体を見渡すと、今まで見えていなかった選択肢が見えてきます」

後悔しない選択をするために

私たちが選択に迷う時、それは「どれが正解か」がわからないからではありません。

「自分が本当に何を大切にしたいのか」が見えていないからです。

でも、視点を高くして本質を見つめ、人生全体のバランスを意識すれば、自然と自分の軸が見えてきます。

そして、その軸に沿って選んだ選択は、たとえうまくいかなかったとしても、後悔にはなりません。

なぜなら、それは他人の期待でも、世間の常識でもなく、あなた自身が心から望んだ選択だからです。

あなたの中に答えはある

美咲がカフェを出る頃には、表情が明るく変わっていました。

これから何を選ぶのか、具体的な答えはまだ出ていません。

でも、どう選べばいいのかという道筋は、はっきりと見えていました。

人生の岐路に立つ時、私たちは誰かに答えを教えてもらうことはできません。

でも、自分の中にある本当の想いを見つけ、人生全体を見渡す視点を持つことはできます。

そして、その視点を持った時、あなたはもう迷わなくなります。

なぜなら、あなたの中にすでに答えがあるからです。

ABOUT ME
蓮彩 聖基 <br>(はすたみ こうき)
蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得
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