アスリート

抜け出せないスランプの正体|進化の前夜を乗り越える方法

蓮彩聖基

何をやってもうまくいかない時期の正体

練習では身体が覚えているはずの動きなのに、なぜか本番でうまくいかない。今までできていたことが、急にできなくなる。何をやっても空回りして、まるで自分だけが取り残されているような感覚。スランプと呼ばれるこの時期は、アスリートにとって最も苦しい瞬間かもしれません。ですが、この苦しみには意味があるのです。スランプとは、ただ下手になったわけではありません。あなたのマインドが、次のステージへ向かおうとしている証なのです。私たちの無意識には「ホメオスタシス」という現状維持の機能が備わっています。これは本来、私たちを守るための仕組みですが、成長しようとするとき、この機能が「今のままでいい」と引き戻そうとする力として働きます。スランプとは、まさにこの「今の自分」と「成長した未来の自分」との間で起きている臨場感の綱引きなのです。

技術ではなくマインドに目を向ける

スランプに陥ると、多くのアスリートは技術練習に没頭しようとします。もっと練習すれば、もっと努力すれば、きっと抜け出せるはずだと。その姿勢は尊いものですが、実はスランプの本質は技術的な問題ではないことがほとんどです。あなたには、今のレベルでパフォーマンスを発揮するための技術がすでに備わっています。もしそれがなければ、そもそもスランプという状況にすら到達していないはずです。では、なぜうまくいかないのか。それは、あなたのマインドが「次のレベルの自分」を受け入れようとしているからです。成長とは、少しずつ積み重なった経験値がある時点で一気に開花する現象です。毎日の練習で蓄えられたものが、ある瞬間に「レベルアップ」として現れる。スランプとは、その直前の最終調整期間なのです。だからこそ、焦って技術だけにフォーカスするのではなく、マインドを整えることが大切になります。

ストレスの中では身体は応えてくれない

スポーツの世界では、結果がすぐに数字として現れます。タイム、スコア、順位。その客観的なデータは、時に私たちを追い詰めます。結果が出ないことへの焦り、周囲からの期待、ライバルとの比較。そうしたプレッシャーの中でストレスを抱えながら練習を続けても、身体は本来の力を発揮してくれません。緊張やストレスは、肉体のパフォーマンスに直接影響を与えます。身体が硬直し、呼吸が浅くなり、本来持っている技術を引き出せなくなる。これは根性や気合いの問題ではなく、私たちの身体の仕組みとしてそうなっているのです。だからこそ、スランプの時期に最も大切なのは、自分自身をリラックスさせること。練習は今まで通り続けながら、心の状態を穏やかに保つことなのです。

できている自分のイメージだけを持ち続ける

では、スランプを抜け出すために何をすればよいのでしょうか。答えはシンプルです。「できている自分」のイメージだけを持ち続けること。今がうまくいっていないなら、最高のパフォーマンスを発揮している時の自分を思い浮かべてください。身体が自然に動き、すべてが噛み合っていた瞬間。ゾーンに入り、結果がついてきた時の感覚。その自分に臨場感を持ち続けるのです。もし今の限界を超えたいなら、その限界を超えている自分をイメージしてください。私たちの脳は、臨場感の高い世界を現実として認識します。過去も現在も未来も、脳にとっては同じ情報空間の中にあります。だからこそ、未来の成功した自分に強い臨場感を持つことで、無意識はその方向へと自然に導いてくれるのです。技術練習は今まで通り積み重ねながら、マインドの中では常に「できている自分」を生きる。それがスランプを乗り越える最も確かな方法です。

スランプとは進化への招待状

スランプは「乗り越えなければならない苦しみ」ではありません。それは「次のレベルに行く前の最終調整」であり、進化への招待状なのです。この解釈が変わるだけで、スランプに対する感じ方は大きく変わります。何もかもうまくいかないように見える時期は、実はあなたが大きく変わろうとしている証拠です。今の自分と、成長した未来の自分との間で、臨場感の戦いが起きているだけ。あなたの中に眠る可能性が、目覚めようとしているのです。焦らず、自分を責めず、ただ「できている自分」を信じ続けてください。あなたが積み重ねてきた時間は、決して裏切りません。スランプを抜けた先には、あなたがイメージし続けてきた、素晴らしい世界が待っています。その日は、思っているよりもずっと近くにあるのです。

ABOUT ME
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ。苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了。ドクター苫米地ワークス修了。田島大輔グランドマスターコーチに師事。認知科学者 苫米地英人博士より、無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得。
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