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試合で実力を出せない原因|感情の記憶と信念の関係

蓮彩聖基

試合で身体が動かなくなる本当の理由

練習では完璧にできる動きが、試合になると途端にぎこちなくなる。スタートラインに立った瞬間、身体が重くなる。そんな経験はありませんか?その原因は技術不足でも準備不足でもなく、あなたの心に刻まれた「感情の記憶」にあるかもしれません。情動記憶とは、強い感情を伴った体験が、感情ごと心と身体に深く刻まれた記憶のことです。大事な場面でミスをした時の悔しさ、観客の視線を浴びて震えた恐怖、コーチに叱責された時の苦しさ。こうした記憶は何年経っても鮮明に蘇り、あなたの無意識の判断基準を作っています。試合前に「また失敗するかもしれない」と感じるのは、過去の痛みを伴った情動記憶が無意識の判断基準となり、「本番=避けるべきもの」という反応を自動的に生み出しているからです。身体が硬くなるのも呼吸が浅くなるのも、過去の情動記憶によって作られた無意識の判断が、意識より先に反応した結果なのです。

感情の記憶が「信念」を形作る

情動記憶は無意識の習慣や態度を作るだけでなく、あなたの「信念」そのものを形成します。信念とは「私はこういう人間だ」「物事はこうあるべきだ」とあなたが信じていることです。信念の生まれ方は二つあります。一つは自分自身の体験から生まれるもの。大会で自己ベストを更新した時の高揚感が「努力は結果につながる」という信念を育てます。反対に、怪我からの復帰で思うように動けなかった無力感が「もう以前の自分には戻れない」という信念を作ってしまうこともあります。もう一つは他者の言葉から受け取るもの。コーチに「お前は本番に弱い」と繰り返し言われた時の悔しさが「私は本番に弱い選手だ」という信念を刻みます。言葉そのものよりも、その言葉を受け取った時の感情の強さが、信念の深さを決めるのです。

信念は連鎖し、競技人生を支配する

信念は一つだけで存在するものではありません。たくさんの信念が互いに結びつき、一つの体系を作ります。それがブリーフシステムです。「私は本番に弱い」という信念があると、それに関連して「プレッシャーに弱い」「注目されると力が出ない」「大事な場面ほどミスをする」といった信念が連鎖的に生まれます。そしてこれらが一つのシステムとして機能し、あなたの行動や選択を無意識に決めていくのです。このブリーフシステムも、元をたどれば過去の情動記憶から生まれています。だからこそ、根本にある情動記憶に働きかけることが、信念を変える鍵になるのです。

「未来の記憶」が信念を書き換える

過去の情動記憶が今の信念を作っているなら、新しい情動記憶を作ることで信念は変えられます。それが「未来の記憶」という考え方です。ゴールを達成した自分を、五感と感情を総動員してリアルに想像してみてください。試合会場の空気、観客の歓声、身体が思い通りに動く感覚、ゾーンに入ったあの集中状態。ゴールを達成した瞬間の、心の底から湧き上がる喜びと誇らしさ。その感情を今この瞬間に深く味わうのです。脳は現実の体験と臨場感の高いイメージを区別することが苦手です。感情を伴ってリアルにイメージすることで、脳はそれを「すでに起こったこと」として処理し始めます。これが新しい情動記憶となり、「私は本番で力を発揮できる」という新しい信念の種になるのです。さらに日々の練習の中で「苦手な技がきれいに決まった」「プレッシャーの中で冷静に判断できた」といった成功の感覚を身体ごと味わうことも、古い信念を上書きする新しい情動記憶を育てていきます。

あなたの身体に刻まれた努力は、嘘をつかない

「私には無理」「もう限界かもしれない」。もしそんな信念があるとしたら、それは過去の情動記憶が作った一つの解釈に過ぎません。あなたが積み重ねてきた練習の時間、身体に刻まれた努力、その全てが消えることはありません。ゴールを達成した自分を感情とともにリアルに描くこと。日々の練習で生まれる成功の感覚を丁寧に味わうこと。その積み重ねが新しい情動記憶を作り、新しい信念を育てていきます。あなたの競技人生を決めているのは過去の結果ではなく、今この瞬間にどんな未来を心に描くかです。その未来の記憶は、今日からあなた自身の手で作り始めることができるのです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。「自分を変えたい」と思った瞬間から、あなたの人生は動き出しています。 脳と心の使い方を知れば、なりたい自分になれる。 その第一歩を、一緒に踏み出しませんか?

ABOUT ME
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
蓮彩 聖基 (はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ。苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了。ドクター苫米地ワークス修了。田島大輔グランドマスターコーチに師事。認知科学者 苫米地英人博士より、無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得。

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