本当のゴールは、心が震える方にある
「将来、どうなりたいですか?」そう聞かれたとき、あなたはどんな答えを思い浮かべるでしょうか。
「安定した仕事に就きたい」「結婚して家庭を持ちたい」「年収○○万円を達成したい」もしかすると、そんな答えが浮かんだかもしれません。でも、その答えを口にしたとき、心の奥から震えるような感覚がありましたか?
もし「なんとなく、そうあるべきだから」と思っているなら、それは本当のゴールではないかもしれません。この記事では、認知科学とコーチングの視点から、本当のゴール設定の本質についてお伝えします。心から望む未来を描くことができれば、あなたの人生は自然と動き出します。
want toとhave toの決定的な違い
have to のゴール:「~すべき」「~ねばならない」
多くの人が設定しているゴールは、実はhave to(~すべき)のゴールです。
- 「良い会社に就職すべき」
- 「結婚しなければいけない」
- 「もっと稼がなければならない」
- 「人から認められるべき」
こうしたゴールの背景には、
- 社会の常識
- 親や周囲の期待
- 「こうあるべき」という思い込み
が隠れています。
have toのゴールは、誰かの価値観を生きることです。
want to のゴール:「~したい」「心から望む」
一方、want to(~したい)のゴールは、あなたの内側から湧き出る純粋な欲求です。
- 「こうなりたい」と心が躍る
- 「これをやりたい」と自然に体が動く
- 「こんな自分でありたい」と喜べる
want toのゴールには、
- 誰かの期待は関係ない
- 社会的評価も関係ない
- ただ純粋に「そうありたい」という想い
があります。
want toのゴールは、あなた自身の人生を生きることです。
科学が証明する、want toの力
認知科学では、want toのゴールとhave toのゴールでは、脳の働き方がまったく異なることが分かっています。
have toのゴールの場合
- 大脳基底核(習慣や自動行動を司る部分)が働く
- ストレスホルモンが分泌される
- エネルギーが消耗する
- 継続が困難
want toのゴールの場合
- 前頭前野(創造性や問題解決を司る部分)が活性化する
- ドーパミン(快楽物質)が分泌される
- エネルギーが湧いてくる
- 自然と行動が続く
つまり、want toのゴールは、脳を味方につけることができるのです。
「~すべき」ではなく「~したい」が、あなたを動かします。
ゴールとは何か
ゴールの定義
私たちはどのようなゴールを設定すれば良いのでしょうか。そもそもゴールは決して、1つでなければならないというものではありません。しかしいくつもゴールを設定していたとしても前提として、
「現状の外側にある、心から望むゴール」
ここには、2つの重要な要素があります。
- 現状の外側にある
- 心から望む(want to)
この2つが揃って初めて、それはゴールと呼べるのです。
「現状の外側」とは
現状の外側とは、今のあなたの延長線上にはない未来のことです。
たとえば、
❌ 「今の仕事で課長になりたい」→ 現状の内側
✅ 「まったく新しい分野で起業して、社会に新しいサービスを広めたい」→ 現状の外側
❌ 「あと5kg痩せたい」→ 現状の内側
✅ 「健康で輝くライフスタイルを確立して、豊かな人生を生き続ける」→ 現状の外側
現状の内側のゴールは、今のあなたの延長線上にあるため、今のコンフォートゾーンの範囲内です。これでは、本質的な変化は起こりません。
なぜ「現状の外側」が重要なのか
前章でお伝えしたように、脳にはホメオスタシス(現状維持機能)があります。現状の内側のゴールでは、ホメオスタシスが「もう達成したようなもの」と判断し、エネルギーが湧いてきません。
一方、現状の外側のゴールは、脳にとって「新しい世界」です。
すると、脳は
- 新しいコンフォートゾーンを作ろうとする
- RASが新しい情報を集め始める
- 創造性が高まり、方法が見えてくる
という変化を起こします。現状の外側のゴールこそが、あなたを成長させるのです。
社会的価値観ではなく、内的価値観
ゴールは、社会的な成功や評価ではなく、あなた自身の内的な価値観から生まれます。
社会的価値観とは、
- お金をたくさん稼ぐこと
- 地位や名声を得ること
- 人から羨ましがられること
こうした「外側の基準」です。
内的価値観とは、
- 自分らしく生きること
- 誰かの役に立つこと
- 心が満たされること
- 心が喜ぶこと
こうした「内側の基準」です。
他人の評価ではなく、あなたの魂が喜ぶ方向に進むこと。それが真のゴールです。
抽象度の高いゴール設定
抽象度とは何か
抽象度とは、物事を捉える視点の高さのことです。
たとえば、
- 低い抽象度:「リンゴ」
- 中程度の抽象度:「果物」
- 高い抽象度:「食べ物」「栄養」「生命維持」
というように、より広い視点で捉えることを「抽象度を上げる」と言います。
ゴール設定における抽象度
ゴール設定において、抽象度の高さは非常に重要です。
抽象度が低いゴール
「月収50万円を達成する」
「3ヶ月で5kg痩せる」
「TOEICで800点を取る」
これらは具体的ですが、手段に過ぎません。
抽象度が高いゴール
「経済的に自由で、心豊かな人生を送る」
「健康で美しく、自分を愛せる存在でいる」
「世界中の人と心で繋がり、価値を届ける」
抽象度が高いゴールは、
- 達成方法がわからない
- 創造性が発揮される
- 第三者に影響を与える
という特徴があります。
抽象度を上げる問いかけ
もしあなたが具体的なゴールしか思い浮かばないなら、こう問いかけてみてください。「それを達成したら、何が手に入るのか?」「それを達成して、本当に得たいものは何か?」
たとえば、
「月収50万円を達成したい」
→「それを達成したら、何が手に入る?」
→「自由な時間と、好きなことができる余裕」
→「それを得て、本当にしたいことは?」
→「自分らしく生きて、大切な人と豊かな時間を過ごすこと」
このように深掘りすることで、本当のゴールが見えてきます。
具体的な目標は手段。抽象的なゴールは生き方そのものとも言えます。
エフィカシーを高める
エフィカシーとは
エフィカシー(efficacy)とは、ゴール達成を達成する自己能力の自己評価のことです。簡単に言えば、「私はそのゴールを達成できる」「私にはその能力がある」という確信のことです。
エフィカシー低ければ、ゴールは実現しない
どれだけ素晴らしいゴールを設定しても、エフィカシーが低ければ実現しません。
なぜなら、
- 「どうせ無理」と思えば、RASは「無理な理由」を集める
- 「私にはできない」と思えば、行動にブレーキがかかる
- 「失敗する」と思えば、脳はそのシナリオを実現しようとする
エフィカシーが低いと、脳はゴール達成を妨げる方向に働いてしまうのです。
エフィカシーを高める方法
1. 未来の自分になりきる
「ゴールを達成した自分」として、今を生きる
たとえば、
- 「理想の自分だったら、どう考えるか?」
- 「ゴールを達成した私だったら、どう行動するか?」
このように、常に未来の自分の視点で考えることで、セルフイメージが書き換わります。
2. 過去の成功体験を思い出す
「私にはできる」という確信は、過去の成功体験から生まれます。
小さなことでも構いません。
- 努力して達成したこと
- 困難を乗り越えたこと
- 人から感謝されたこと
こうした体験を思い出すことで、エフィカシーが高まります。
3. アファメーションを活用する
アファメーションとは、肯定的な言葉を繰り返し唱えることです。
たとえば、
「私は、理想の自分に向かって進んでいる」
「私には、ゴールを達成する力がある」
「私は、愛されるにふさわしい存在だ」
このような言葉を毎日唱えることで、無意識に「できる」という信念が植え付けられます。
4. 環境を整える
エフィカシーは、環境に大きく影響されます。
- ドリームキラー(夢を壊す人)から離れる
- ポジティブな影響を与えてくれる人と過ごす
- 理想の自分に近い環境に身を置く
環境を変えるだけで、「私にはできる」という感覚が自然と育っていきます。
「できる」と確信することで、本当にできる自分を作ります。
ゴールが人生に与える影響
ゴールは、脳の検索エンジン
ゴールを設定すると、RAS(網様体賦活系)が活性化します。RASは、あなたが「重要だ」と思っている情報を優先的にキャッチする、脳の検索エンジンです。
ゴールを設定すると、
- ゴール達成に必要な情報が目に入るようになる
- 必要な人との出会いが増える
- チャンスに気づけるようになる
ゴールを持つことで、世界の見え方が変わるのです。
ゴールは、新しいコンフォートゾーンを作る
前章でお伝えしたように、脳はコンフォートゾーン(快適な領域)を維持しようとします。ゴールを設定すると、脳は「ゴールを達成した状態」を新しいコンフォートゾーンとして認識し始めます。
すると、
- 今の現状が「居心地悪い」と感じるようになる
- ゴールに向かって進むことが「自然」に感じられる
- 無意識が、ゴール達成を後押しする
ゴールは、あなたを自動的に動かす力になります。
ゴールは、人生の意味を与える
ゴールがあると、毎日に意味が生まれます。
- 朝起きる理由がある
- 努力する方向が明確
- 困難も「成長のプロセス」として受け入れられる
ゴールがない人生は、目的地のない航海のようなもの。どこに向かっているのか分からず、漂流してしまいます。ゴールは、あなたの人生に方向性と意味を与えるのです。
「常識」や「他人の期待」から自由になる
社会の「べき論」に縛られていませんか?
多くの人が、無意識に社会の「べき論」に従っています。
- 「女性は結婚すべき」
- 「安定した仕事に就くべき」
- 「親の期待に応えるべき」
- 「年齢相応であるべき」
こうした「べき論」は、他人が作った価値観です。あなたの人生は、あなたのもの。他人の価値観に合わせる必要はありません。
他人の期待を手放す勇気
他人の期待に応えようとすればするほど、本当の自分から遠ざかります。親が望む道、社会が正しいとする道、周囲が期待する生き方。それらは、本当にあなたが望むものですか?他人の期待を手放すことは、自分を取り戻すことです。
自分の人生を生きる許可を出す
「自分らしく生きていいんだ」この許可を、自分に出してあげてください。
- 常識と違っていても、いい
- 人から理解されなくても、いい
- 失敗してもいい、やり直せばいい
あなたには、あなたの人生を生きる権利があります。
他人の期待ではなく、あなたの心が望む方向へ。
本当のゴールを見つける問いかけ
ここまで読んで、「では、私の本当のゴールは何だろう?」と思ったかもしれません。以下の問いかけに、静かに向き合ってみてください。
問いかけ1:お金も時間も無限にあったら?
もしお金も時間も、すべてが無限にあるとしたら、あなたは何をしたいですか?誰にも邪魔されず、制限もない。そんな状態で、あなたが心からやりたいことは何ですか?
問いかけ2:誰にも見られていなかったら?
もし誰もあなたを見ていなかったら、評価されることも、批判されることもないとしたら。あなたは何をしたいですか?どんな自分でありたいですか?
問いかけ3:人生最後の日に後悔することは?
もし今日が人生最後の日だとしたら、あなたは何を後悔しますか?「もっと○○すればよかった」「本当は○○したかった」その答えの中に、あなたの本当のゴールが隠れているかもしれません。
問いかけ4:心が震えるのはどんなとき?
過去を振り返って、心が震えた瞬間を思い出してください。
- 涙が出るほど感動したこと
- 「これだ!」と感じたこと
- 時間を忘れて没頭したこと
その感覚の先に、あなたのゴールがあるかもしれません。
答えは、あなたの内側にあります。
まとめ:理想の自分は、あなたが決める
本当のゴールは、誰かに与えられるものではありません。あなたの心が震える方向に、それはあります。
この章では、ゴール設定の本質についてお伝えしてきました。
- want toのゴール:心から望む未来
- 現状の外側:今の延長線上にない世界
- 抽象度の高さ:生き方そのものになるゴール
- エフィカシー:「私にはできる」という確信
- 常識からの解放:他人の期待ではなく、自分の人生
理想の自分は、社会が決めるものでも、誰かが与えてくれるものでもありません。あなた自身が、心から望む未来を描いていいのです。
次の章では、「心のブレーキを外す」方法についてお伝えします。ゴールを設定しても、心のブレーキが邪魔をすることがあります。そのブレーキの正体と、解放する方法を一緒に見ていきましょう。
この特集の他の記事
この記事は「自己実現の為のステップアップ講座」の1つです。
- 第1回:なりたい自分になれない理由は脳にある
- 第2回:本当のゴールは、心が震える方にある(この記事)
- 第3回:心のブレーキは、書き換えられる
- 第4回:新しい自分を生きる―行動と習慣
