コーチングの基本

なりたい自分になれない理由は脳にある

kokihasutami

「もっと自信を持ちたい」「理想の自分に近づきたい」「変わりたいのに、変われない」そんな想いを抱えながら、毎日を過ごしていませんか?

自己啓発の本を読んだり、セミナーに参加したり、新しい習慣を始めてみたり。
努力しているはずなのに、気がつけばいつもの自分に戻ってしまう。

「私には変わる力がないのかもしれない」そう感じてしまうこともあるかもしれません。でも、安心してください。あなたが変われないのは、意志が弱いからでも、才能がないからでもありません。

それは、脳の仕組みが関係しているのです。

この記事では、認知科学とコーチングの視点から、「なぜ変われないのか」というメカニズムを紐解いていきます。脳の仕組みを理解することで、変化への第一歩を踏み出すことができるようになります。

脳は変化を嫌う―ホメオスタシスの働き

ホメオスタシスとは何か

私たちの脳には、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という仕組みが備わっています。

ホメオスタシスとは、体温や血圧、心拍数などを一定に保つ機能のこと。たとえば、暑い日には汗をかいて体温を下げ、寒い日には震えて体温を上げるのも、このホメオスタシスの働きです。

この機能は生命維持にとって非常に重要なものです。体温が急激に変化すれば、生命の危機に直結します。だからこそ、脳は「現状を維持すること」を最優先に設計されているのです。

心理的なホメオスタシスの影響

ホメオスタシスは、身体だけでなく心理的な領域にも作用します。つまり、脳は「今のあなた」の現状を維持しようとするのです。

  • 今の生活習慣
  • 今の人間関係
  • 今の考え方
  • 今の感情パターン

これらすべてを「安全な状態」として認識し、変化を「危険なこと」と判断します。だから、新しいことを始めようとすると、脳は強烈なブレーキをかけるのです。

「変わりたい」と思っても戻ってしまう理由

朝、起きた時に「今日から〇〇をしよう」と決意をしたとします。でも、夜になると元の自分に戻っている。これは、意志の弱さではありません。脳が「いつもの自分」に引き戻そうとする、ホメオスタシスの働きなのです。

新しい行動や考え方は、脳にとっては「違和感」。だから、元の状態に戻そうとする力が自動的に働いてしまいます。

変われないのは、あなたのせいではなく、脳の仕組みによるものなのです。

コンフォートゾーンが現実を作る

コンフォートゾーンとは

コンフォートゾーンとは、あなたが「心地よい」「安心」と感じる領域のことです。認知科学では、このコンフォートゾーンが私たちの行動や思考、感情を大きく左右していることが分かっています。

たとえば、

  • 年収300万円の人は、300万円の生活が「当たり前」
  • 自信がない人は、自信がない状態が「普通」
  • 人間関係が苦手な人は、一人でいることが「居心地がいい」

このように、今のあなたの状態そのものが、あなたのコンフォートゾーンになっているのです。

コンフォートゾーンの外は「違和感」

コンフォートゾーンの外に出ようとすると、脳は強い違和感を覚えます。

  • 新しい環境に飛び込もうとすると、不安になる
  • 自己主張しようとすると、罪悪感が湧いてくる
  • 収入が上がると、なぜか使ってしまう

これらはすべて、コンフォートゾーンから外れたことを、脳が「異常」と判断しているサインです。脳は、あなたを元のコンフォートゾーンに引き戻そうとします。これが、変化を阻む最大の要因なのです。

現状維持が「安全」だと脳は信じている

ここで大切なのは、脳は「良い悪い」ではなく「慣れているか、慣れていないか」で判断しているということです。たとえ今の状況が苦しくても、それが「慣れた状態」であれば、脳は安全だと認識します。

逆に、どんなに素晴らしい未来であっても、「慣れていない状態」は危険だと判断するのです。

あなたが変われないのは、脳が「今のまま」を守ろうとしているからなのです。

セルフイメージが人生を決めている

セルフイメージとは何か

セルフイメージとは、「自分はこういう人間だ」という自己認識のことです。

  • 「私は人見知りだ」
  • 「私は努力家だ」
  • 「私は愛される価値がない」
  • 「私は何をやってもうまくいかない」

こうした自己認識が、あなたの行動や現実を作り出しています。認知科学では、人は自分が思い描いている自己イメージ通りに行動することが明らかになっています。

セルフイメージが現実を作るメカニズム

セルフイメージは、無意識レベルであなたの選択や行動を支配します。たとえば、「私は人見知りだ」というセルフイメージを持っている人は、

  1. 人が集まる場所を避ける
  2. 話しかけられても控えめに対応する
  3. 自分から話しかけることをしない

こうした行動を無意識に選択します。その結果、「やっぱり私は人見知りだ」という現実が強化されるのです。逆に、「私は人と関わるのが好きだ」というセルフイメージを持っている人は、

  1. 積極的に人がいる場所に行く
  2. 笑顔で話しかける
  3. 自然と人との縁が広がる

という行動を取り、その結果、人間関係が豊かになっていきます。セルフイメージは、自己実現的な予言として機能するのです。

「今の自分」を超えられない理由

もしあなたが「理想の自分」をイメージしても、セルフイメージが変わっていなければ、現実は変わりません。なぜなら、脳は「今のセルフイメージ」に合った現実を作り出そうとするからです。

  • 「私には無理」と思っていれば、無理な現実が作られる
  • 「私はこの程度」と思っていれば、その程度の現実が作られる

逆に言えば、セルフイメージを書き換えることができれば、現実も自然と変わり始めるということです。

あなたが見ている現実は、あなたのセルフイメージが映し出されたものなのです。

RAS(網様体賦活系)が見える世界を決める

RASとは何か

RAS(Reticular Activating System:網様体賦活系)とは、脳幹にある情報フィルター機能のことです。

私たちは毎日、膨大な量の情報に囲まれています。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚…すべてを合わせると、1秒間に約1100万ビットもの情報が脳に入ってくると言われています。

しかし、私たちが意識的に処理できる情報は、わずか約40ビット程度と言われています。つまり、脳は99.9%以上の情報を無意識に削除しているのです。この「どの情報を意識に上げるか」を決めているのが、RASです。

RASは「重要だと思うもの」だけを見せる

RASは、あなたが「重要だ」と認識している情報だけを、意識に届けます。

たとえば、

  • 妊娠すると、街中に妊婦さんが目につくようになる
  • 車を買おうと思うと、その車種がよく目に入る
  • 「お金がない」と思っていると、出費ばかりが目につく

これらはすべて、RASが働いている証拠です。妊婦さんも、その車も、お金の出費も、以前から存在していました。でも、あなたの意識が向いていなかったから、「見えていなかった」のです。

「見たいもの」が見える世界を作る

ここで重要なのは、RASは「あなたが重要だと思っているもの」を優先的に見せるということです。

  • 「私はダメだ」と思っていれば、自分のダメなところばかりが目につく
  • 「人は信用できない」と思っていれば、裏切りや不誠実な行動ばかりが見える
  • 「私には無理だ」と思っていれば、できない理由ばかりが集まってくる

逆に、

  • 「私はできる」と思っていれば、可能性や方法が見えてくる
  • 「人は優しい」と思っていれば、温かい出来事に気づくようになる
  • 「私は成長している」と思っていれば、小さな進歩が見えるようになる

あなたが「何を重要だと思っているか」が、見える世界を決めているのです。

なりたい自分が見えない理由

もしあなたが「なりたい自分」になれないと感じているなら、それはRASが「今の自分」に合った情報ばかりを集めているからかもしれません。

  • 理想の自分に近づくための情報は、目の前にあるのに見えていない
  • チャンスは訪れているのに、気づいていない
  • 応援してくれる人がいるのに、疑いの目で見ている

RASは、あなたの信念やセルフイメージに基づいて、情報を選別します。

見える世界を変えたいなら、まず「何を重要だと思うか」を変える必要があるのです。

「頑張っているのに変われない」の正体

努力の方向が間違っている

多くの人は、「もっと頑張らなければ」と考えます。

  • もっと自己啓発本を読もう
  • もっとセミナーに参加しよう
  • もっと我慢して努力しよう

でも、努力の方向が間違っていれば、どれだけ頑張っても結果は出ません。なぜなら、脳の仕組みを無視した努力は、ホメオスタシスの力に負けてしまうからです。

意識レベルの変化では足りない

「変わりたい」と意識的に思うだけでは、変化は起こりません。なぜなら、私たちの行動のおおよそ95%以上は、無意識によって支配されているからです。

  • 意識:約5%
  • 無意識:約95%

意識で「変わりたい」と思っても、無意識が「今のままでいい」と思っていれば、無意識の力が勝ちます。だからこそ、無意識レベルでの変化が必要なのです。

「今の自分」を否定しても変われない

多くの人は、「今の自分」を否定することで変わろうとします。

  • 「こんな自分はダメだ」
  • 「もっとしっかりしなければ」
  • 「こんなんじゃ愛されない」

でも、自己否定では変われません。なぜなら、脳は否定形を理解できないからです。

「ダメな自分」と思えば思うほど、脳は「ダメな自分」にフォーカスし、RASはダメな部分ばかりを見せるようになります。

変わるために必要なのは、否定ではなく、新しいセルフイメージの創造なのです。

脳の仕組みを理解すれば、変化は可能になる

変われないのは「あなたのせい」ではない

ここまで読んで、気づいたことはありませんか?あなたが変われないのは、意志が弱いからでも、才能がないからでもありません。それは、脳の仕組みが「現状維持」を優先するように設計されているからです。

  • ホメオスタシスが、元に戻そうとする
  • コンフォートゾーンが、安全な領域に留まらせようとする
  • セルフイメージが、「今の自分」を作り出す
  • RASが、「今の自分」に合った情報だけを見せる

これらはすべて、脳の自然な働きなのです。

仕組みを知れば、対処法が見える

でも、安心してください。脳の仕組みを理解すれば、その仕組みを味方につけることができます。

次の章では、

  • どうすれば脳を「変化モード」にできるのか
  • どうすればコンフォートゾーンを広げられるのか
  • どうすればセルフイメージを書き換えられるのか

という具体的な方法をお伝えしていきます。

変化の第一歩は「理解」から

変化への第一歩は、「理解すること」です。なぜ変われないのか。どんな仕組みが働いているのか。それを知るだけでも、あなたの中で何かが変わり始めます。なぜなら、RASが「変化」に関する情報をキャッチし始めるからです。

あなたはもう、変化への扉の前に立っています。

まとめ:脳を理解することが、変化の第一歩

変われないのは、あなたのせいではありません。脳の仕組みを理解し、その仕組みを味方につければ、あなたは必ず変われます。

この章では、「なぜ変われないのか」という疑問に、認知科学とコーチングの視点から解説してきました。

  • ホメオスタシス:脳は現状維持を優先する
  • コンフォートゾーン:慣れた領域が「安全」と認識される
  • セルフイメージ:自己認識が現実を作り出す
  • RAS:重要だと思うものだけが見える

これらの仕組みは、あなたを縛るものではありません。理解し、活用すれば、あなたを理想の自分へと導く強力な味方になります。

次の章では、「理想の自分を設計する」ための具体的な方法、ゴール設定の本質についてお伝えしていきます。あなたの中に眠る可能性を、一緒に開いていきましょう。

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ABOUT ME
蓮彩 聖基 <br>(はすたみ こうき)
蓮彩 聖基
(はすたみ こうき)
パーソナルコーチ
1997年 青森県生まれ
苫米地式コーチング認定コーチ養成講座 第7期修了
ドクター苫米地ワークス修了
田島大輔グランドマスターコーチに師事
認知科学者 苫米地英人博士より、
無意識へ深く働きかける「内部表現の書き換え」や、コーチングの技術を習得
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